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2026.10.02

SAKURA法律事務所コラム 第6回 企業の不祥事報道はネットから削除できる?デジタルタトゥーへの対処法を弁護士が解説

弁護士

依田 俊一

「デジタルタトゥー」というと、根拠のないデマや過去の逮捕報道など、個人に関する被害を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、デジタルタトゥーは個人だけの問題ではありません。企業もまた、過去の不祥事に関する記事がネット上に残り続けることで、集客や採用に影響が出るといった被害やリスクを抱えています。

本記事では、企業にとってのデジタルタトゥーについて、よくある相談事例を交えながら、記事を削除するための方法を解説します。

デジタルタトゥーに関する企業の相談事例

事例① 食中毒を起こしてしまった飲食店

都内のある飲食店は、数年前に食中毒を発生させてしまいました。当時は食中毒に関する報道が相次いでいた時期でもあり、店名を明らかにした形で報じられました。保健所の調査と営業停止期間を経て、現在は再発防止策を講じたうえで通常営業に戻っており、その後食中毒は一度も起きていません。

しかし、数年が経った今でも、店名で検索すると当時の記事が表示される状態が続いています。新規のお客様の多くは来店前にネットでお店を調べるため、記事を見て来店をためらう方がいるのではないか、客足に影響しているのではないかと懸念しており、記事を削除する方法はないかと悩んでいます。

事例② ウイルス感染症が発生したペットショップ

複数のペットショップを運営するA社では、数年前、ある店舗でウイルス性の感染症が広がり、店舗で扱っていた動物が数匹死亡しました。感染力の強いウイルスであったことや、複数の動物が死亡したことから、社名・店舗名とともに報道されました。さらに、A社による公表に時間がかかったことで「隠蔽しようとしたのではないか」という憶測が広がり、動物愛護に関心のある方のブログなどでも拡散される事態となりました。

現在は、保健所や関係団体の指導の下で消毒や調査を終え、営業を再開しています。しかし、店名で検索すると当時の記事やブログが今も表示されます。購入を検討しているお客様だけでなく、採用活動にも悪影響が及ぶおそれがあるため、記事の削除を希望しています。

企業の不祥事はなぜデジタルタトゥーになりやすいのか

企業が不祥事を起こした場合、企業の規模にかかわらず、社名とともに報道されることが少なくありません。企業の不祥事では「どの会社で起きたのか」自体が重要な情報であるため、個人の事件のように匿名で報じられることはほとんどありません。特に、上場企業や有名企業、多くの利用者を抱える企業は、社会的な影響が大きいことから報道されやすい傾向にあります。

今回の2つの事例は、いずれも大企業ではありません。それでも報道されたのは、食中毒や感染症という、人や動物の健康・安全に関わる問題だったことが大きな理由と考えられます。

報道記事が検索結果に残り続ける理由

報道機関のウェブサイトは、一般に検索エンジンからの評価(いわゆる「ドメインパワー」)が高く、検索結果の上位に表示されやすいという特徴があります。そのため、一度社名入りの記事が掲載されると、社名で検索したときに、その記事が長期間にわたって上位に表示され続けることになります。

また、ネット上で報じられた不祥事の記事は、SNSやブログ、まとめサイトなどに転載されることもあります。拡散が進むほど削除すべき対象が増え、対応の負担も大きくなります。拡散が見られる場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、削除に着手することをおすすめします。

企業の不祥事報道を削除する4つの方法

いったんネット上に公開された記事や、転載されたブログなどを削除するには、主に次の4つの方法があります。一般的には、①から順に検討していきます。

① 報道機関やサイト運営者に削除を求める

まずは、記事を掲載している報道機関に対し、問い合わせフォームやメールなどで削除を依頼します。ブログやSNSに転載されている場合は、そのサイトやサービスの運営者に削除を求めます。

もっとも、企業の担当者が連絡しても、取り合ってもらえないことが少なくありません。弁護士が代理人となり、法的根拠を示したうえで、必要に応じて法的措置も検討している旨を伝えることで、削除に応じてもらえる可能性が高まります。

② サーバーの管理者(プロバイダ)に削除を依頼する

転載先のサイト運営者が削除に応じない場合は、そのサイトのサーバーを提供している事業者(プロバイダ)に削除を依頼します。ブログやウェブサイトの多くは、事業者が提供するサーバー上で公開されています。そのため、サーバー上のデータが削除されれば、記事はネット上から閲覧できなくなります。

依頼の方法として代表的なのが、一般社団法人テレコムサービス協会などが関与して策定されたガイドラインに沿った書式(いわゆる「テレサ書式」)による送信防止措置依頼です。多くの事業者がこの書式に対応しており、業界で広く用いられています。

また、2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(旧・プロバイダ責任制限法)により、一定規模以上の大規模プラットフォーム事業者には、削除申出の窓口や手続の整備・公表、申出に対して原則7日以内に削除するかどうかを判断し通知することなどが義務付けられました。大手SNSなどに転載されている場合は、各社が公表している削除申出窓口を利用することも有効です。

③ 裁判所に削除の仮処分を申し立てる

プロバイダが任意の削除に応じない場合には、裁判所に仮処分を申し立て、記事の削除を命じる仮処分命令を出してもらいます。

プロバイダが任意の削除に慎重になるのには理由があります。プロバイダは、サーバーの利用者であるサイト運営者に対してサービスを提供する立場にあります。仮に、実際には誰の権利も侵害していない記事を、依頼があったからといって削除してしまうと、今度はサイト運営者から損害賠償を請求されるおそれがあるのです。

このように、プロバイダは、削除を求める側とサイト運営者の双方から責任を問われうる立場にあります。そこで、情報流通プラットフォーム対処法は、どのような場合にプロバイダが責任を負わないのかを定めています。裁判所の仮処分命令が出れば、削除すべき理由のある情報であることが裁判所によって認められたことになるため、プロバイダとしても責任を問われる心配なく削除に応じることができます。

④ 報道機関に対して訴訟を提起する

報道機関が任意の削除に応じない場合は、名誉権などの人格権に基づく削除請求や損害賠償請求を求めて、訴訟を提起する方法もあります。

もっとも、実務上は、報じられた不祥事が事実であっても、報道から相当の期間が経過していれば削除に応じてもらえるケースも少なくありません。訴訟にまで至らず、①の段階で解決することも多くあります。

早期解決のために弁護士へご相談を

企業の不祥事報道に関する削除依頼は、企業ご自身で行うことも可能です。しかし、法的根拠に基づいて弁護士が依頼したほうが、削除に応じてもらいやすいケースもあります。

SAKURA法律事務所では、報道機関やサイト運営者への削除依頼はもちろん、送信防止措置依頼書(テレサ書式)の作成や、裁判所への仮処分の申立てにも対応しています。インターネット上の記事や投稿でお困りの際は、お気軽にご相談ください。