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2026.08.25

【コラム掲載のお知らせ】「公益通報制度は『企業を守る制度』でもある――2026年改正公益通報者保護法と実効的な内部通報制度の構築」を公開しました

SAKURA法律事務所は、このたび、企業における公益通報・内部通報制度の意義と、2026年12月1日に施行される改正公益通報者保護法を踏まえた実務対応について解説するコラム「公益通報制度は『企業を守る制度』でもある――2026年改正公益通報者保護法と実効的な内部通報制度の構築」を公開いたしました。

公益通報制度は、単に法令上求められる通報窓口を設置するための制度ではありません。企業内部に存在する法令違反、不正、不適切な行為その他のリスクを早期に把握し、重大な企業不祥事へと発展する前に、自ら調査し、是正し、再発を防止するための重要な経営インフラでもあります。

近時、公益通報者保護法をめぐる制度整備は一層進んでおり、2026年12月1日には改正公益通報者保護法が施行されます。企業においては、単に内部通報窓口が存在するかという形式面にとどまらず、通報者が安心して利用できる制度となっているか、経営陣から必要な独立性が確保されているか、通報受付後の調査、是正及び再発防止までの一連の手続が実効的に機能しているかという観点から、既存の制度を改めて点検することが重要です。

また、外部の法律事務所を公益通報窓口として設置することは、社内の人間関係や上下関係から一定の距離を置いた通報経路を確保するとともに、企業又は経営陣にとって必ずしも耳当たりのよくない情報を、適切な経路を通じて経営に届けるためのガバナンス機能としても重要な意味を持ちます。

SAKURA法律事務所では、企業及び各種法人を対象として、外部公益通報窓口(社外窓口)業務を提供しております。外部窓口の新規設置、既存の内部通報制度の見直し、内部公益通報規程の策定・改定、経営トップに関する通報の独立ルートの設計、改正公益通報者保護法への対応その他、各企業の実情に応じた公益通報体制の構築及び運用を支援いたします。

以下、コラム全文をご紹介いたします。

公益通報制度は「企業を守る制度」でもある――2026年改正公益通報者保護法と実効的な内部通報制度の構築

企業による法令違反や不正が大きく報道されることは、決して珍しいことではありません。粉飾決算、品質検査の偽装、製品データの改ざん、不正請求、ハラスメント、安全基準違反など、その内容は多岐にわたります。

こうした企業不祥事を振り返ると、問題が発覚する以前から、社内では誰かが異変に気付いていたというケースが少なくありません。従業員その他の関係者による内部通報や内部告発を契機として、それまで経営陣や社外からは把握することのできなかった問題が明らかになることもあります。

問題を早い段階で把握することができれば、企業は自ら事実関係を調査し、必要な是正措置を講じ、被害の拡大を防ぐことができます。他方で、問題を知る者が存在していたにもかかわらず、その声が経営陣まで届かなければ、小さな不正が長期間放置され、やがて重大な企業不祥事へと発展することがあります。

組織の内部又はこれと密接な関係にある者から法令違反等に関する情報を受け付け、企業が自ら問題を早期に発見し、是正するための仕組みが、公益通報者保護制度及び内部通報制度です。もっとも、実効性のある制度を構築するためには、単に「通報窓口があります」と掲示するだけでは足りません。

制度の成否を左右するのは、問題を発見した者が、安心して声を上げることのできる環境を実際に構築できているかどうかです。

公益通報者保護法はどのように発展してきたのか

日本において公益通報者保護法が制定されたのは2004年です。当時、食品偽装や自動車のリコール隠しをはじめとする企業不祥事が相次ぎ、組織内部から不正を知らせた者をいかに保護するかが重要な社会的課題となっていました。

当初の法律においても、公益通報を理由とする解雇を無効とし、降格、減給その他の不利益な取扱いを禁止する制度は設けられていました。しかし、内部公益通報対応体制の整備を事業者に義務付ける制度はなく、通報者を特定させる情報について、現在のような刑事罰を伴う従事者の守秘義務も設けられていませんでした。

大きな転換となったのが2020年の法改正です。同改正は2022年6月1日に施行され、常時使用する労働者が300人を超える事業者について、内部公益通報に適切に対応するために必要な体制を整備すること等が義務付けられました。300人以下の事業者についても努力義務とされています。

また、公益通報対応業務従事者について、公益通報者を特定させる事項を漏らしてはならない旨の守秘義務が法定され、その違反について30万円以下の罰金が設けられました。

現在、企業に求められているのは、形式的に窓口を設置することではありません。内部規程を整備し、通報を受け付け、必要な調査及び是正を行い、幹部が関係する事案について独立性を確保し、利益相反を排除するとともに、通報者に対する不利益取扱いや情報漏えい等を防止するところまで含めて、制度を実効的に機能させることです。

さらに、2025年には公益通報者保護法が改正され、2026年12月1日から施行されます。改正法では、一定のフリーランスについても保護対象が拡大されるなど、公益通報者の保護及び事業者における体制整備が一層強化されます。

企業においては、施行日を待って対応を開始するのではなく、自社の通報制度が改正法施行後も実効的に機能するものとなっているかを、あらかじめ点検しておく必要があります。

公益通報制度は「企業を告発するための制度」ではない

公益通報制度について、「従業員が会社を告発するための制度」という印象を持たれることがあります。

しかし、企業経営の観点から考えると、その捉え方は十分ではありません。

むしろ、公益通報制度は、企業が自らの問題を早期に発見し、自ら是正するための重要な「経営インフラ」と捉えるべきです。

不正が発生した直後であれば、事実関係を確認し、関係者を限定し、必要な是正措置を講ずることによって、問題を比較的小さな段階で収束させられる場合があります。

ところが、通報制度が機能していなければ、現場で問題を把握している従業員が存在しても、その情報が経営陣まで届きません。問題は放置され、被害が拡大し、時には組織的な隠蔽まで生じ、その後、内部告発、SNS、報道等によって突然社会問題化するという経過をたどる可能性があります。

その段階に至れば、企業が受ける損失は、当初の法令違反や不正によって生じる損失だけでは済まないことがあります。顧客や取引先からの信用、企業ブランド、株主や金融機関との関係、採用力、役職員の士気など、企業価値を構成する様々な要素に影響が及び得ます。

企業にとって本当に警戒すべきなのは、「通報を受けること」ではありません。

「問題が存在しているのに、誰からも通報されないこと」です。

この発想の転換は、実効性ある内部通報制度を考える上で非常に重要です。

通報者は、企業にとって重要なリスク情報の提供者である

経営陣が企業内部で発生する全ての問題を直接把握することは不可能です。

品質データの改ざん、不適切な会計処理、不正請求、ハラスメント、安全基準違反、取引先や委託先との間の問題などは、経営陣よりも、日々その現場で業務を行っている者の方が早く気付くことがあります。

そう考えると、内部通報を行う者は、必ずしも企業と対立する存在ではありません。むしろ、経営陣の目が届かない場所で生じている問題を知らせる重要な情報提供者です。企業にとっての「目」であり、「耳」であり、「口」であるともいえます。

通報を組織に対する敵対行為と受け止める企業文化の下では、問題を知っている者ほど沈黙するようになります。

反対に、問題を指摘しても不利益な取扱いを受けず、秘密が適切に守られ、公正な調査が行われ、問題が確認されれば企業が適切に是正するという実績が積み重なれば、制度に対する信頼が形成されます。

「問題を指摘した者を排除する会社」ではなく、「問題を指摘してくれた者の声を受け止め、自ら改善できる会社」であることは、企業文化及びガバナンスの観点からも大きな意味を持ちます。

不祥事以上に企業を傷つける「隠蔽」

企業不祥事において社会から特に厳しい評価を受けるのは、不正が発生したことそれ自体だけではありません。

不正を把握していたにもかかわらず放置した、調査を十分に行わなかった、通報を握りつぶした、あるいは事実を隠蔽したという事情が重なると、企業に対する社会的評価は大きく低下します。

企業活動を行う以上、組織内部で何らかの問題が生じる可能性を完全に排除することは容易ではありません。だからこそ重要なのは、問題が生じた際に、それをどの程度早く把握し、自ら調査し、必要な是正措置及び再発防止措置を講ずることができるかです。

内部通報制度は、不祥事を完全にゼロにするための制度というよりも、問題を早期に発見し、深刻化する前に是正することによって、企業に生じる損害を最小限に抑えるための制度でもあります。

なぜ外部弁護士を通報窓口とするのか

内部通報制度を実効的に機能させるための一つの方法が、法律事務所その他の外部機関に通報窓口を設置することです。

例えば、ある部門の責任者について不正の疑いを持った従業員が、その責任者と日常的に仕事をしている人事部門やコンプライアンス部門に通報することには、相当な心理的抵抗が伴うことがあります。

通報したことが本人に伝わるのではないか、自分が特定されるのではないか、今後の人事評価に影響するのではないかという不安があれば、通報をためらうことは十分に考えられます。

外部の弁護士等を配置した窓口を設けることにより、社内の人間関係や上下関係から一定の距離を置いた通報経路を確保することができます。

これは通報者のためだけではありません。

経営者の側から見れば、「会社や経営陣にとって都合の悪い情報であっても、重大なリスク情報が適切な経路によって経営まで届く仕組み」を確保することを意味します。経営陣が重大な問題を知らないまま事態が拡大することほど、企業経営にとって危険なことはありません。

したがって、外部弁護士による通報窓口は、単なる通報の受付代行ではなく、企業のリスク管理及びコーポレートガバナンスを補完する機能として位置付けることができます。

顧問弁護士を窓口にすれば十分か

外部窓口を設ける際には、「現在の顧問弁護士をそのまま通報窓口にすればよいのではないか」という問題も生じます。

顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすること自体が、法律上禁止されているわけではありません。

もっとも、日常的に経営陣や人事部門から相談を受け、企業側の代理人として活動する可能性のある顧問弁護士に対して、従業員が経営陣や会社そのものに関する通報を安心して行うことができるかという問題は残ります。

したがって、企業の規模、組織構造、既存の顧問関係及び想定される通報内容によっては、日常的な顧問業務を担当する法律事務所とは別の法律事務所を、独立した外部公益通報窓口として設置することも有力な選択肢となります。

重要なのは、形式的に「外部の弁護士」が存在することではなく、通報者から見て、実際に利用しやすく、秘密が守られ、適切な対応が期待できる窓口となっているかということです。

経営トップに関する通報には「別のルート」が必要になる

内部通報制度を設計する際、特に慎重な検討を要するのが、代表者その他の経営トップ自身が通報対象となる場合です。

通常の通報ルートが人事部門から担当役員、さらに代表者へ報告する構造となっていれば、代表者自身に関する通報について同じルートを用いることは適切ではありません。

このような場合に備えて、監査役、監査役会、監査等委員会、監査委員会、社外取締役等へ直接報告する独立した経路をあらかじめ設けておくことが重要です。

実際に問題が発生してから報告先を検討するのではなく、「誰が通報対象となった場合に、誰へ報告するのか」を平時から設計しておくことによって、通報の握りつぶしや利益相反を防ぐことができます。

通報窓口は「受け付けるだけ」では機能しない

もう一つ重要なのは、通報を受け付けた後の対応です。

内部通報制度は、メールや電話を受け付けるだけでは完成しません。

通報内容を整理し、調査の必要性を判断し、必要な場合には証拠を保全し、関係者へのヒアリングその他の調査を行い、法令違反又は不適切な行為が確認された場合には是正措置を講じ、その原因を分析して再発防止につなげる必要があります。

また、制度への信頼を維持するためには、可能な範囲で通報者に対応状況を知らせることや、通報を理由とする不利益な取扱いが行われていないかを確認することも重要です。

つまり、「受付から調査へ、調査から判断へ、判断から是正へ、そして再発防止へ」という一連の流れが機能して初めて、内部通報制度は企業の自浄作用を支える仕組みとなります。

これから企業が確認すべきこと

2026年12月1日の改正法施行を控え、企業においては、自社に通報窓口が存在するかどうかだけではなく、その制度が現実に機能するものとなっているかを確認する必要があります。

通報者が安心して利用できる窓口となっているか。経営陣から必要な独立性が確保されているか。経営トップ自身が関係する事案について別の報告ルートが存在するか。公益通報対応業務従事者が適切に指定され、通報者を特定する情報が厳格に管理されているか。利益相反を排除する仕組みがあるか。通報後の調査、是正及び再発防止までの手続が明確になっているか。

こうした点を一つずつ検証することが、実効的な制度づくりにつながります。

特に、制度は既に存在するものの、ほとんど通報が寄せられていないという企業については、「問題がないから通報がない」と直ちに評価するのではなく、「従業員等から見て利用しにくい制度になっていないか」という視点から見直すことにも意味があります。

「通報されない企業」から、「自ら問題を発見し、是正できる企業」へ

公益通報制度の本質は、通報者と企業を対立させることではありません。

現場に存在するリスク情報を早期に経営へ届け、重大な不祥事へと発展する前に、自ら調査し、自ら是正することのできる企業をつくることにあります。

適切に運用された内部通報制度は、コンプライアンス、内部監査、リスク管理及びコーポレートガバナンスを補完し、企業の自浄作用を高めます。

「通報されない会社」であることを目標にするのではなく、「問題があれば安心して声を上げることができ、その情報を企業が真摯に受け止め、適切に是正できる会社」であることが、これからの企業には求められます。

SAKURA法律事務所では、企業のガバナンス及びリスクマネジメントの強化を支援するため、外部公益通報窓口(社外窓口)業務を行っています。通報の受付及び事実関係の整理に加え、企業内の適切な機関への報告、経営トップが関係する事案における独立した報告ルートの設計、必要に応じた調査及び法的評価、内部公益通報規程の策定又は見直し、改正公益通報者保護法への対応等について、企業の規模、業種及び組織構造に応じて支援いたします。

既に内部通報制度を設けているものの、その実効性を確認したい場合、顧問法律事務所とは別の外部窓口を検討している場合、これから制度を構築する場合、又は2026年12月1日施行の改正法への対応を検討している場合には、制度の具体的な内容が固まっていない段階からでもご相談いただけます。

公益通報制度を、単なる法令遵守のための仕組みにとどめるのではなく、企業を守り、企業をより強くするための経営インフラとして機能させることが重要です。

外部公益通報窓口に関するお問い合わせ

外部公益通報窓口の新規設置、既存制度の見直し、内部公益通報規程の策定・改定、2026年12月1日施行の改正公益通報者保護法への対応その他、公益通報・内部通報制度に関するご相談は、SAKURA法律事務所までお問い合わせください。

制度の具体的な設計がまだ固まっていない段階からでも、現在の社内体制及び課題をお伺いした上で、各企業の規模、業種、組織構造及び既存のコンプライアンス体制に応じた外部公益通報窓口及び内部通報体制をご提案いたします。

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代表弁護士 道下 剣志郎