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2026.09.30

【コラム掲載のお知らせ】「企業が見落としてはいけない『非弁リスク』――弁護士法72条とリーガル・アウトソーシング」を公開しました

SAKURA法律事務所は、このたび、企業が外部の代行業者、コンサルタントその他の専門家へ業務を委託する際に留意すべき弁護士法72条上の「非弁リスク」と、企業法務を適法かつ効率的に外部化するための考え方を解説するコラム「企業が見落としてはいけない『非弁リスク』――弁護士法72条とリーガル・アウトソーシング」を公開いたしました。

退職代行、債権回収支援、賃貸借・立退き支援、契約見直し、金融機関対応、M&A支援など、企業又は個人の業務を外部から支援するサービスは多様化しています。これらのサービスには有用なものが数多く存在する一方、具体的な法律判断や、本人を代理した法的交渉に踏み込む場合には、弁護士法72条との関係が問題となり得ます。近時、退職代行サービスをめぐっても、弁護士会から非弁行為に関する注意喚起が継続的に行われています。

本コラムでは、最高裁平成22年7月20日第一小法廷決定を手掛かりとして、企業が非弁リスクをどのように捉えるべきかを整理した上で、債権回収、金融機関とのリスケ交渉、M&A、労務、不動産という実務上問題になりやすい場面を具体的に検討しています。併せて、本来弁護士が担うべき法律判断・代理交渉を、企業の外部法務機能として一貫して受任するSAKURA法律事務所のリーガル・アウトソーシングについてもご紹介します。

以下、コラム全文をご紹介いたします。

企業が見落としてはいけない「非弁リスク」

弁護士法72条とリーガル・アウトソーシング――本来弁護士が担うべき法律判断・代理交渉を、企業法務の実行力へ

企業が法務を外部へ委託すること自体は、もちろん問題ではありません。経営コンサルタント、M&Aアドバイザー、公認会計士、税理士、社会保険労務士、不動産会社、管理会社その他の専門家は、それぞれの専門性を生かして企業活動を支えています。問題となるのは、委託した業務が、いつの間にか具体的な法律判断や、相手方との法的交渉に踏み込んでいる場合です。

企業側にとって、この問題は「委託先が違法かどうか」というだけの話ではありません。委託先の業務が弁護士法違反として刑事事件化すれば、企業自身の信用、資金調達、取引、案件遂行、レピュテーションに重大な影響が及ぶことがあります。企業法務の外部委託を考える際には、価格や利便性だけでなく、「この業務は、誰が適法に行うことのできる業務なのか」という視点が不可欠です。

1 実際の事件――スルガコーポレーションと立退き交渉

具体的なイメージを持つために、まず著名な先例を見てみます。株式会社スルガコーポレーションは、1972年3月に「駿河建設株式会社」として設立され、当初は建設業を中心に事業を展開しました。その後、不動産事業を拡大し、1990年代後半からは、権利関係が複雑化した物件を取得し、その権利関係を整理して価値を高めた上で売却する不動産ソリューション事業を伸ばしていきました。当時の倒産情報によれば、用地調査から総合企画、売却先決定、設計・建築、アフターメンテナンスまでを手掛ける一貫体制を採っていたとされています。

こうした事業では、取得したビルの既存テナントに退去を求め、権利関係を整理する必要が生じます。同社の外部調査委員会報告書や当時の報道によれば、同社は複数の物件について外部の不動産業者等へ立退き交渉を委託していました。その関係者が2008年3月、弁護士法違反の容疑で逮捕され、法人及び一部関係者が起訴される事態となりました。

その一連の立退き交渉に関係する事件の一つとして残っているのが、最高裁平成22年7月20日第一小法廷決定(平成21年(あ)第1946号、刑集64巻5号793頁)です。最高裁の決定文では当事者名は匿名化されていますが、認定された事実によれば、不動産売買業等を営むA社は、取得したビルを解体して土地を売却するなどの事業を行っており、そのビルには74名の賃借人が事業用に各室を賃借していました。A社から委託を受けたB社側は、弁護士資格等を有しないにもかかわらず、約10か月にわたり、賃貸借契約の合意解除と明渡しの実現に向けて賃借人らと交渉しました。

最高裁は、この業務について、賃借人らが賃貸借契約期間中で現に業務を行い、立ち退く意向を有していなかったことを踏まえ、「立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件」に係るものと判示しました。そして、弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関する法律事務を、報酬目的で業として取り扱ったものとして、同条違反の罪の成立を認めた原判断を是認しました。

重要なのは、最高裁が「実際に訴訟になっていたか」だけを見ていないことです。その案件の性質上、立退き合意の成否、時期、立退料等をめぐる法的紛議がほぼ不可避であることを重視しています。企業実務に置き換えれば、相手方との交渉が本格的に紛争化してから弁護士へ切り替えればよいとは限らず、案件を外部へ委託する段階で、その業務が法律事件に関する法律事務へ踏み込む性質を有していないかを検討する必要があります。

スルガコーポレーションは、2008年6月24日、東京地方裁判所に民事再生手続開始を申し立てました。同社の経営破綻を立退き交渉事件だけに帰することは適切ではありません。しかし、当時の倒産情報では、委託先関係者の弁護士法違反事件が大きく報じられたことによる信用低下、不動産事業への影響、金融機関からの支援難、資金調達難等が資金繰り悪化の要因として指摘されています。関係者の逮捕から民事再生申立てまでは約3か月でした。

委託元企業自体が最高裁決定の被告人となったわけではありません。それでも、企業が法的交渉を外部の非弁護士へ委ねることは、委託先の刑事責任だけで完結せず、企業の信用や事業継続にまで影響する可能性があることを、この一連の経緯は示しています。

2 「支援」「助言」と「交渉」は同じではない

世の中には、家賃回収代行、退職代行、契約見直し、経費削減、売上改善、事業再生支援その他、企業活動を支える多様なサービスがあります。経営コンサルタントが、企業の採算性、組織、業務フロー、財務その他の観点から助言すること自体は、通常、直ちに弁護士法72条の問題となるものではありません。

しかし、経営上の助言と、個別具体的な法律問題について判断し、本人を代理して相手方と交渉することとは性質が異なります。例えば、会社から「この取引先との契約をどう処理すべきか」と相談を受け、「採算が悪いので、契約を終了して別の取引先へ切り替えるべきだ」と助言することは経営判断に関する助言です。他方で、「この契約は民法又は契約条項上解除できる」「この通知を出せば契約は終了する」と具体的な法的効果を判断し、さらに依頼者に代わって解除の有効性や損害賠償の有無を相手方と交渉する段階に入れば、弁護士法72条との関係を慎重に検討しなければなりません。

非弁リスクを考える上で、とりわけ重要なのが「交渉」です。前記最高裁決定でも、立退き合意の成否、時期、立退料をめぐる交渉が中心となりました。名称として「経営支援」「交渉支援」「コンサルティング」と掲げていても、実際に行っていることが依頼者を代理した法的紛議の解決交渉であるならば、名称だけで法的評価が変わるものではありません。

東京弁護士会も、退職代行サービスについて、未払残業代、退職条件、パワーハラスメントに基づく損害賠償その他の法律的な問題につき、弁護士等でない事業者が本人に代わって会社と話し合いをする場合には、非弁行為となる可能性があるとして継続的に注意喚起しています。外部業者へ何を委託できるかを考えるときは、「サービス名」ではなく「実際の業務内容」を見ることが重要です。

3 企業実務で非弁リスクが生じやすい5つの場面

弁護士法72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、業として、一般の法律事件に関する法律事務を取り扱い、又はその周旋をすることを原則として禁止しています。違反した場合、弁護士法77条3号により、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金の対象となります。もっとも、個別行為が非弁行為に当たるかは、案件の性質、具体的な行為内容、報酬目的、業性、他法令による権限等を踏まえて判断されます。以下では、企業実務で特に境界が問題となりやすい場面を見ていきます。

① 債権回収

「取引先が売買代金3000万円を支払わない」という場面で、コンサルタントが相手方の財務状況を調査し、回収可能性を分析することと、依頼会社を代理して「3000万円を支払え」と請求し、2000万円の一括払いを条件に和解するなどの交渉を行うこととは異なります。後者のように、債権の存否、金額、支払時期、減額、和解条件等の法的紛争を解決するための交渉を有償で業として行う場合には、弁護士法72条との関係が問題となり得ます。

② 金融機関とのリスケジュール・事業再生交渉

銀行借入れの返済期限を延長したい企業について、資金繰り表、事業再生計画、金融機関向け説明資料等を作成することは、財務・経営支援として専門家が担い得る領域です。他方で、依頼者を代理して、返済期限、弁済額、利率、担保、保証、債権放棄その他の法的条件を金融機関と交渉し、債権債務関係の変更を取りまとめる場面では、法律事務としての性質が強くなります。財務面の支援と法的代理交渉を適切に役割分担する必要があります。

③ M&A

対象会社の財務分析、EBITDA分析、市場分析、シナジー分析、企業価値評価、PMI計画等は、M&Aアドバイザーや財務専門家が大きな役割を果たす領域です。他方で、株式譲渡契約等の具体的条項について法的な権利義務を判断し、表明保証違反、補償請求、解除その他の法的主張を相手方に行い、解決条件を交渉する場面では、弁護士が担うべき法律業務との境界が問題となります。M&Aでは、経済条件、財務、税務、法務をそれぞれの専門家が適切に分担することが重要です。

④ 労務問題

人事制度の設計、労務管理、社会保険手続その他については、社会保険労務士をはじめとする専門家が重要な役割を担っています。他方で、個別の従業員について解雇の有効性、未払残業代、退職条件、損害賠償その他の法的紛争が生じ、会社を代理して示談条件を交渉する場面では、弁護士法72条その他の法令による権限の範囲を確認する必要があります。特定社会保険労務士には法律で認められた一定の紛争解決手続における代理権がありますが、それぞれの資格者が行える業務は法定されています。企業側は、案件ごとに誰がどこまで代理できるのかを確認することが重要です。

⑤ 不動産・立退き交渉

「この不動産を取得すれば再開発によって収益性が高まる」といった投資・事業上の助言と、「テナントに一定額を支払う条件で退去してもらうため、賃貸借契約の合意解除、明渡時期、立退料を本人に代わって交渉する」こととは異なります。後者は、まさに前記最高裁決定が扱った問題に接近します。管理会社、不動産会社、AM・PM会社等と連携する場合でも、法的な権利義務についての交渉部分は、弁護士が担当する体制を構築することが重要です。

4 SAKURA法律事務所の対応――本来弁護士が担うべき業務を、弁護士が実行する

SAKURA法律事務所では、企業の債権回収、契約終了・条件変更、労務、不動産、金融機関対応、M&Aその他の案件について、法的判断から相手方との交渉、通知書・合意書等の作成、必要に応じた保全・訴訟・執行までを一貫して担う「リーガル・アウトソーシング(企業法務代行・交渉支援)」を提供しています。

本サービスの目的は、コンサルタントや他士業を排除することではありません。経営、財務、税務、人事、不動産、M&A等の専門家と適切に連携しながら、弁護士が担うべき法律判断及び代理交渉を明確に切り分け、企業側で非弁リスクを抱え込まない体制を構築することにあります。

また、これは単なる「弁護士費用の安さ」を目的とするサービスでもありません。外部業者へ委託した後に法律問題が生じて弁護士へ引き継ぎ、さらに紛争化して別の代理人へ移るという流れでは、企業には重複した説明、資料確認、引継ぎ、意思決定の遅れが発生します。法的交渉へ至る可能性が高い案件について、早い段階から弁護士が関与することで、企業法務全体の時間、工数及びリスクを含めた総コストを合理化することが可能になります。

現在利用している代行・コンサルティングサービスについて法的な問題がないか確認したい場合、既に外部業者が交渉を始めている案件を弁護士へ切り替えたい場合、法務部門の人員を増やさず一定の交渉案件を外部化したい場合、債権回収、契約終了、賃貸借その他の同種案件が継続的に発生する場合など、具体的な受任体制が固まっていない段階からご相談いただけます。

企業にとって重要なのは、「誰に頼めば一番安いか」だけではありません。委託した業務がどこまで法的判断や交渉に踏み込むのか、委託先にその業務を行う法的権限があるのか、紛争が顕在化した場合に誰が最後まで責任を持って対応できるのかまで確認する必要があります。弁護士が本来担うべき法律業務については、弁護士がその責任を負って遂行する。それが、企業自身を守るための最も基本的な法務体制の一つです。

参考法令・裁判例

本稿で取り上げた主要な法令・裁判例は、弁護士法72条及び77条3号、最高裁平成22年7月20日第一小法廷決定(平成21年(あ)第1946号、刑集64巻5号793頁)です。また、退職代行サービスと非弁行為については、東京弁護士会非弁護士取締委員会による近時の注意喚起等も参照しています。

お問い合わせ

リーガル・アウトソーシング(企業法務代行・交渉支援)の導入、現在利用している代行・コンサルティングサービスと弁護士法72条との関係、債権回収、契約終了・条件変更、労務、不動産、金融機関対応、M&Aその他の法的交渉に関するご相談は、SAKURA法律事務所までお問い合わせください。

お問い合わせの際には、ご相談内容の概要、現在の委託先又は関係する専門家の有無、相手方との交渉が既に開始しているかどうか、対応期限の有無等を分かる範囲でご記載いただけますと、その後の確認が円滑です。

SAKURA法律事務所 お問い合わせフォーム
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代表弁護士 道下 剣志郎


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