法学舎コラム

INSTITUTE COLUMN

2026.10.08

【コラム掲載のお知らせ】金山直樹弁護士「最高裁への上告について――最高裁への上告事件、受任いたします」を公開しました

弁護士

SAKURA法学舎所長

慶應義塾大学名誉教授

金山 直樹

SAKURA法律事務所は、このたび、当事務所所属の金山直樹弁護士によるコラム「最高裁への上告について――最高裁への上告事件、受任いたします」を公開いたしました。本コラムでは、最高裁判所への民事上告及び上告受理申立てについて、その制度の仕組みと、最高裁上告事件において弁護士に求められる役割を、金山弁護士自身の問題意識と実務的な視点から論じています。以下、コラム全文をご紹介いたします。

最高裁への上告について

最高裁への上告事件、受任いたします

高等裁判所で敗訴すると、担当弁護士は、「このあたりが潮時です。最高裁に上告しても、基本、無駄ですから」と助言することが少なくありません。そのように言われると、敗訴した当事者も、もう諦めるしかないという気持ちになることでしょう。しかも、上告しようと思っても、事件を受任してくれる弁護士を新たに探すことは、とくに民事事件では容易ではないのが現状です。

1 上告は「狭き門」!?

弁護士が「上告しても無駄です」と伝え、加えて、上告事件を積極的に受任する弁護士が多くないことには理由があります。最高裁判所が上告受理申立ての大多数を受理せず、いわば「門前払い」となる事件が多いからです。

たしかに、裁判を受ける権利は憲法上保障されています(憲法32条)。しかし、いかなる事由に基づいて上告を認めるかは審級制度の問題であり、憲法81条の規定するところを除いては、立法の定めるところに委ねられています。最高裁も、民事訴訟法312条及び318条による上告理由の制限について、この趣旨を示しています(最高裁平成13年2月13日第三小法廷判決・裁判集民事201号95頁、判例時報1745号94頁)。

実際に最高裁の門を叩くためには、現行の民事訴訟法に従い、主として、(i)「上告」と、(ii)「上告受理申立て」という二つの道を考えることになります。(i)の上告は、憲法違反のほか、一定の重大な訴訟手続上の違反等を理由とするものです。通常の民事訴訟でより問題となるのは、(ii)の上告受理申立てです。

2 上告受理申立制度

上告受理申立ては、文字どおり「狭き門」です。最高裁判所が公表した2024年の民事上告受理事件の統計では、新たに受け付けられた事件(新受)は2,456件、同年中に終局した事件(既済)は2,397件でした。既済事件のうち、不受理決定によって終局したものは2,356件で、既済事件全体の約98.3%を占めます。新受件数と既済件数は同一の事件群ではないため、これらの数字から個々の申立ての厳密な「受理率」を算出することはできません。それでも、最高裁の実質的な審理に進む事件が極めて限られていること、すなわち上告受理申立てが「狭き門」であることは、統計からも明らかです。

なぜ、これほど狭き門なのでしょうか。そこには、民事訴訟法が定める上告受理制度の仕組みがあります。民事訴訟法318条1項は、「最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる」と定めています。つまり、一定の重要な法令解釈上の問題を含む事件について、最高裁判所が受理するか否かを判断する制度なのです。

3 上告期限

敗訴当事者には、さらに上告期限が待ち構えています。高等裁判所の判決に対して最高裁に上告又は上告受理申立てをするためには、判決正本を受け取った日又は受け取ったとみなされる日の翌日から起算して、原則として2週間以内に、上告状又は上告受理申立書を提出しなければなりません。

例えば、8月20日に判決正本の送達を受け、期間の末日について休日等の特則が問題とならない場合には、9月3日までに申立手続を行う必要があります。書面自体は簡潔な形式で提出することができますが、当事者は、上告受理申立てが極めて狭き門であるという現実を前に、短期間で難しい決断を迫られます。

そして、上告状又は上告受理申立書を提出した後には、理由書の提出期限が続きます。理由を当初の書面に記載しなかった場合、裁判所から所定の通知を受け取った日又は受け取ったとみなされる日の翌日から起算して、原則として50日以内に上告理由書又は上告受理申立て理由書を提出しなければなりません。

要するに、当事者は上告するか否かを原則2週間で決めなければならず、上告を決心すると、担当弁護士は限られた期間内に理由書を作成し、裁判所へ提出しなければならないのです。上告は、まさに「時間との闘い」です。

4 狭き門を叩く弁護士

上告受理申立ては、受理される可能性が極めて低いとはいえ、決してゼロではありません。そこには一筋の光明が残されています。受理されるかどうかを単なる統計や確率だけで語ることはできず、理由書が、当該事件に「法令の解釈に関する重要な事項」が含まれていることをどこまで説得的に示せるかが重要だからです。

地方裁判所や高等裁判所では、審理の大半が事実についての争いに費やされます。これに対して最高裁は、高裁が認定した事実を前提に、憲法違反、判例との関係、重大な法令解釈上の問題等を審査する法律審です。したがって、単に「一審・二審の事実認定が間違っている」と主張しても足りません。

訴訟である以上、事実関係への言及は不可欠です。しかし、求められるのは、事実関係を高度な法律問題へと昇華させ、法律構成として再構築する能力です。その意味において、高度な法律論がすべてだと言っても過言ではありません。ここに、憲法・手続法・判例法理に精通した理論派・法学者型の弁護士が必要とされる理由があります。

5 最高裁判所調査官の存在

では、上告理由書や上告受理申立て理由書は、最高裁でどのように検討されるのでしょうか。最高裁判所には調査官が置かれ、上告事件等について調査し、裁判官の審理を補佐しています。民事事件についても、限られた数の調査官が多数の事件の調査に当たっています。

上告担当弁護士としては、多忙を極める調査官の知性を刺激してその関心を引き、少なくとも「この事件の法的問題は何か」を一読して理解してもらえる理由書を作らなければなりません。そのためには、例えば冒頭で、「原判決のどの法的判断が、従来の判例とどう矛盾しているのか」「どの法令解釈上の重要問題があるのか」を明快かつ簡潔に整理することが重要です。もちろん、その先に、深い説得力を備えた文章力と法理論が求められます。

6 狭き門を拓く上告理由書

理由書において原判決を批判する場合、原判決が最高裁判例に相反する判断であると主張できるのであれば、それは重要な入口になります。しかし、判例違反が顕著とはいえず、むしろ高裁が既存の判例や通説をそのまま事件に当てはめたことによって敗訴することも珍しくありません。

この場合、理由書は、判例・通説を乗り越える理論を構築しなければなりません。判例・学説を全体的構造の中で捉え、そこに通底する理論を発見し、その理論を起点に判例をさらに展開・発展させる道筋をつける高度な力量が求められます。時には、新たな理論を創造し、提示することも必要になります。

その際に重要となるのが、「法の発展(法の創造性)」という動的な視点です。法の発展の背景には、常に時代や社会の変化・変容があります。理由書では、そうした時代の変化を的確に捉え、「社会の変容に伴い判例を見直し、法を新たに発展させるべきだ」という明確なビジョンを提示することが大切です。

最高裁判決には、個別事件の解決を超えて、裁判実務や社会に一定の政策的インプリケーションが伴います。したがって、理由書においても、その法解釈が社会にどのような影響を与えるのか、現在の社会の動向とどのように関わるのかを視野に入れる必要があります。究極的には、法を通じて「どのような社会にしたいのか」という社会像まで問われることがあります。

このような理由書を作成するためには、粘り強い思考力、展開力、構想力が求められます。

7 SAKURA法律事務所での上告事件の扱い

高等裁判所で敗訴したら、担当弁護士と善後策を協議すると同時に、できる限り早くSAKURA法律事務所までご相談ください。上告状・上告受理申立書の提出期限は刻々と迫るため、まず高裁判決と訴訟経過を確認し、最高裁で十分に争う余地があるかどうかを検討します。

依頼者にとっては、最高裁での逆転可能性が最大の関心事でしょう。その点を断定することはできません。しかし、事件記録を検討した上で、最高裁に提示すべき重要な法律問題が存在するか、十分に争う余地があるかについて、可能な限り率直にお伝えします。その上で、最終的に当事務所へ事件を任せるかどうかをご判断いただければと考えています。

当事務所が事件を受任した場合には、担当弁護士が一審・二審の裁判記録をゼロベースで精読します。また、依頼者との面談を重視し、必要に応じて何度でも直接お話を伺うことで、事件の核心がどこにあるのかを的確に見極めます。上告事件は、それほどの仕事量と集中力を必要とするからです。

SAKURA法律事務所には、元裁判官として裁判実務を経験した弁護士や、慶應義塾大学名誉教授として長年にわたり法学研究及び教育に携わってきた金山直樹弁護士が所属しています。裁判実務と法理論の両側面から高裁判決を批判的に検討し、完成度の高い上告理由書・上告受理申立て理由書を作成することを目指します。

もっとも、上告受理又は原判決の破棄を保証することはできません。記録を検討した結果、最高裁において争うための十分な法的根拠が見いだせない場合には、その旨を率直にお伝えします。

上告期限は一刻一刻迫ってきます。「この判決で本当に終わりなのか」と思われたら、一日でも早く、当事務所へご相談ください。

最高裁上告事件に関するお問い合わせ

最高裁判所への民事上告、上告受理申立て、上告理由書・上告受理申立て理由書の作成、最高裁段階からの訴訟代理その他のご相談は、SAKURA法律事務所までお問い合わせください。

お問い合わせの際には、「最高裁上告事件に関する相談」である旨、高等裁判所の判決言渡日、判決正本の送達日、現在の代理人の有無その他分かる範囲の情報をご記載ください。上告期限が迫っている場合には、その旨も併せてお知らせください。

なお、お問い合わせ又は法律相談のお申込みをいただいたこと自体により、上告又は上告受理申立ての法定期間が停止又は延長されるものではありません。期限が迫っている場合には、現在の代理人又は判決をした裁判所にも直ちに期限をご確認ください。

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代表弁護士 道下 剣志郎

法令・統計等については、民事訴訟法、民事訴訟規則及び裁判所公表資料を確認の上で記載しています。2024年の件数は、最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」の最高裁判所における民事上告受理事件の新受件数及び既済状況に基づきます。新受件数と既済件数は同一の事件群ではないため、これらの数値から個々の事件についての厳密な受理率を算出することはできません。