法的判断・相手方との交渉・債権回収・契約対応等を弁護士が一気通貫で担い、非弁行為に関するコンプライアンス・リスクの低減と企業法務コストの最適化を支援します
SAKURA法律事務所は、このたび、企業が日常的に抱える債権回収、契約終了・条件変更、労務、不動産、金融機関対応、M&Aその他の法務について、法的判断から相手方との交渉、通知書・合意書等の作成、必要に応じた紛争対応までを弁護士が一貫して担う、企業向け「リーガル・アウトソーシング(企業法務代行・交渉支援)」の提供を開始いたしましたので、お知らせいたします。
本サービスは、企業が従来、経営コンサルタント、各種代行業者、管理会社、M&A支援会社その他の外部事業者に委託してきた業務のうち、実質的に法律判断又は法律事件に関する代理・交渉を伴う部分について、弁護士が適法かつ専門的に受任し、企業内の法務部門又は既存の外部専門家と連携しながら遂行するものです。単なる「法律相談」にとどまらず、実際に相手方との交渉を前に進め、回収、解約、条件変更、和解その他の具体的な成果に結び付けることを目的としています。
サービス開始の背景――「支援」と「法律事務」の境界が企業リスクになる時代
近時、退職代行、債権回収支援、家賃回収、賃貸借・立退き支援、契約見直し、金融機関対応、M&A支援その他、企業又は個人に代わって一定の業務を処理する各種の代行・コンサルティングサービスが広く利用されるようになっています。こうしたサービスには、経営分析、財務資料の作成、事業計画の策定、業務改善その他、各専門家が適法に提供し得る有用なサービスが多数存在します。
他方で、業務の内容が、個別の契約や権利義務について法的判断を行う段階、又は依頼者を代理して相手方と法的な主張・反論を交わし、金額、支払条件、契約終了、損害賠償その他の条件を交渉する段階に入ると、弁護士法72条との関係を慎重に検討しなければなりません。弁護士法72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、業として、訴訟事件その他一般の法律事件に関する鑑定、代理、仲裁、和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらを周旋することを原則として禁止しています。他の法律によって一定の資格者等に権限が認められている場合は別として、法律問題について依頼者を代理して交渉することは、典型的に慎重な検討を要する領域です。
実際、東京弁護士会も、退職代行サービスについて、未払残業代、退職条件、パワーハラスメントに基づく損害賠償等の法律的な問題をめぐり、弁護士等でない事業者が本人を代理して会社と交渉する場合には、非弁行為となる可能性があるとして継続的に注意喚起を行っています。問題は、サービスの名称が「代行」「支援」「コンサルティング」であるかどうかではなく、実際に何を行っているかです。
SAKURA法律事務所は、この領域について、外部サービスを一律に否定する立場を採るものではありません。経営、財務、人事、IT、不動産その他の専門家が、それぞれの専門性に基づいて企業を支援することには大きな価値があります。その一方、法律判断や法的交渉に踏み込む部分については、適切な段階で弁護士へ接続し、又は当初から弁護士が受任することが、企業自身を守るためにも重要であると考えています。
最高裁平成22年7月20日決定が示した「委託する企業側」のリスク
この問題を考える上で重要な先例が、最高裁平成22年7月20日第一小法廷決定(刑集64巻5号793頁)です。これは、弁護士資格を有しない事業者らが、ビル所有者から委託を受け、多数の賃借人との間で賃貸借契約の合意解除及び明渡しに向けた交渉を行った事案です。
最高裁は、当該業務について、立退き合意の成否、立退きの時期及び立退料の額をめぐり、交渉によって解決しなければならない法的紛議が生ずることが「ほぼ不可避」である案件に係るものであり、弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものと判断し、同条違反の罪の成立を認めた原判断を是認しました。
この事件が企業実務に与える教訓は、非弁行為を行った側だけを見ていれば足りないということです。委託元となった企業にとっても、委託先の業務が刑事事件化すれば、取引先、金融機関、投資家その他のステークホルダーからの信用、資金調達、案件遂行、レピュテーションに重大な影響が生じる可能性があります。
実際に、この事件に関連して立退き交渉を委託していた株式会社スルガコーポレーションは、2008年6月に民事再生手続を申し立てました。同社の民事再生をこの事件だけに帰することは適切ではありませんが、当時の倒産情報等では、委託先関係者の弁護士法違反事件が大きく報道されたことによる信用低下、金融機関からの支援の困難化、資金調達難等が、資金繰り悪化の要因として指摘されています。企業にとって、委託先が「安い」「早い」「便利」という理由だけで法律問題を外部に委ねることには、想定以上のリスクが伴う場合があります。
弁護士が担うべき業務を、弁護士が実行する
企業活動の現場では、経営判断と法律判断が連続している場面が数多くあります。例えば、採算性の低い取引を終了するかどうかは経営判断ですが、現在の契約をいつ、どの条項に基づき、どのような手続で終了できるか、違約金や損害賠償のリスクがあるか、相手方とどの条件で合意解約するかは法律問題です。
同様に、債権回収において相手方の財務状況を分析することは経営・財務支援の領域ですが、債務の存否を主張し、支払金額や期限を交渉し、和解条件を取りまとめることは法律事務の中核に位置します。金融機関との関係でも、事業再生計画や資金繰り表の作成と、既存債務の返済期限、弁済額、担保、保証その他の法的条件を代理して交渉することとは、性質が異なります。
SAKURA法律事務所のリーガル・アウトソーシングは、この「境界部分」を企業側に負わせないためのサービスです。法的な争点が生じた後で初めて弁護士へ案件を引き継ぐのではなく、法的判断又は交渉が必要となる時点から弁護士が直接関与し、事実関係の整理、法的評価、戦略立案、相手方への通知、交渉、合意書作成、必要に応じた保全・訴訟までを一つの流れとして取り扱います。
主な対応領域
債権回収・取引先との条件交渉
売掛金、業務委託料、貸付金その他の未収債権について、支払督促にとどまらず、債権の法的根拠及び証拠を確認した上で、弁済額、支払期限、分割条件、担保、保証、和解条件等を交渉します。任意交渉で解決できない場合には、仮差押え、訴訟、強制執行その他の法的手続への移行も一貫して検討します。
契約の終了・解除・条件改定・取引再編
不採算取引、継続困難な業務委託、販売代理店・フランチャイズその他の継続的契約について、解除権の有無、更新拒絶、合意解約、損害賠償・違約金、経過措置等を分析し、必要な通知及び相手方との交渉を行います。単に「契約書をチェックする」だけではなく、企業が実際に取引関係を整理し、次の事業判断へ移れるところまで支援します。
金融機関対応・事業再生局面の法的交渉
資金繰り改善又は事業再生の局面において、財務・事業面の専門家と連携しながら、返済条件の変更、期限猶予、担保・保証、債権放棄その他の法的条件について検討し、必要に応じて金融機関との交渉を担います。会計・財務上の分析と法的交渉を明確に区分しつつ、企業側では一つのプロジェクトとして進められる体制を構築します。
M&A・出資・事業承継に伴う法務交渉
M&Aアドバイザー、FA、会計士、税理士その他の専門家と協働し、法務デュー・ディリジェンス、株式譲渡契約・事業譲渡契約・投資契約等の契約交渉、表明保証違反、補償請求、価格調整、解除その他の法律問題を担当します。経済条件に関する助言と法的権利義務に関する交渉を適切に役割分担し、案件全体の安全性と実行力を高めます。
労務・退職・人事紛争
従業員との退職条件、解雇、未払賃金、ハラスメント、損害賠償その他の個別労働紛争について、会社側の法的立場を整理し、必要に応じて代理人として交渉します。社内の人事制度設計や労務管理を担う専門家とも連携しながら、紛争化した部分については弁護士が責任を持って対応します。
不動産・賃貸借・立退き・明渡し
賃料改定、賃料滞納、契約解除、立退き、明渡し、原状回復、敷金・保証金その他の賃貸借に関する問題について、管理会社、不動産会社、AM・PM会社等と連携しつつ、法律判断及び相手方との法的交渉を弁護士が担当します。特に立退き交渉については、前記最高裁決定が示す非弁リスクを踏まえ、適切な役割分担を行うことが重要です。
「安い外注」ではなく、企業法務の総コストを最適化する
本サービスが目指すのは、単純に弁護士費用を安くすることではありません。企業法務における本当のコストは、外部業者への委託料だけでなく、社内担当者の工数、委託先ごとの説明・引継ぎ、対応の遅れ、誤った法的判断による損失、紛争が深刻化した後の弁護士費用、レピュテーション毀損等を含めて評価すべきものです。
例えば、コンサルタントが事実関係を整理し、交渉段階で法律問題が生じたため弁護士へ引き継ぎ、弁護士がもう一度記録を読み直し、さらに訴訟になって別の代理人へ移るという運用では、企業側に重複コストと時間的ロスが生じます。法的交渉に至る可能性が高い案件について、当初から弁護士が一貫して担当することにより、こうした二重・三重のコストを抑え、意思決定と実行の速度を高めることができます。
SAKURA法律事務所では、単発の案件のみならず、同種案件が継続的又は多数発生する企業についても、案件量、業務フロー、社内体制等を確認した上で、効率的な受任・連携体制をご提案します。企業の法務部門を代替することが適切な領域と、社内法務・顧問弁護士・他士業・コンサルタント等と役割分担すべき領域を峻別し、企業全体として最も合理的な体制を構築することを重視します。
既存のコンサルタント・専門家との協働も前提とします
企業の課題は、法律だけで解決できるものではありません。経営、会計、税務、人事、事業再生、不動産、M&A等については、それぞれの専門家が有する知見が不可欠です。SAKURA法律事務所は、既存の外部専門家との関係を切り替えることを一律に求めるものではなく、むしろ、それぞれの専門性を活かしながら、弁護士が担うべき法律判断・代理交渉部分を明確に切り分け、適切なチームを形成することを重視しています。
特に、現在利用しているコンサルティングサービス又は代行サービスについて、「この範囲まで任せてよいのか」「相手方との交渉に入ったが、引き続き同じ事業者へ任せて問題ないか」「どの時点で弁護士へ切り替えるべきか」といったご相談にも対応します。個別の行為が弁護士法72条に違反するかどうかは、報酬目的、業としての取扱い、事件性、具体的な行為内容、他法令による権限の有無等を踏まえて判断されるため、名称だけで一律に結論付けるべきではありません。
企業経営者・法務責任者の皆様へ
企業にとって、法律業務の外部委託は「誰に頼めば一番安いか」だけで決めるべき問題ではありません。委託した業務がどこまで法的判断や交渉に踏み込むのか、委託先にその権限があるのか、紛争が顕在化した場合に誰が責任を持って最後まで対応できるのかまで確認する必要があります。
SAKURA法律事務所は、弁護士にしかできない業務を、弁護士が本来の責任を負って遂行することにより、企業の法務を「助言」で止めず、「実行」まで前に進めます。法律相談、契約書作成、相手方への通知、交渉、和解、保全、訴訟・執行までを一つの流れとして捉え、企業の経営判断を実現するための外部法務機能としてご利用いただくことを想定しています。
既に外部事業者へ委託している案件について途中から弁護士へ切り替えたい場合、法務部門の人員を増やさずに一定の交渉案件を外部化したい場合、債権回収・契約終了・賃貸借その他の同種案件が継続的に発生している場合など、具体的な制度設計が固まっていない段階からご相談いただけます。
リーガル・アウトソーシングに関するお問い合わせ
企業向けリーガル・アウトソーシング(企業法務代行・交渉支援)の導入、現在利用している代行・コンサルティングサービスと弁護士法72条との関係、債権回収、契約終了・条件変更、労務、不動産、金融機関対応、M&Aその他の法的交渉に関するご相談は、SAKURA法律事務所までお問い合わせください。
お問い合わせの際には、ご相談内容の概要、現在の委託先又は関係する専門家の有無、相手方との交渉が既に開始しているかどうか、期限の有無等を分かる範囲でご記載いただけますと、その後の確認が円滑です。
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代表弁護士 道下 剣志郎