SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下剣志郎 Legal Update
2026年9月24日
SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下 剣志郎
SAKURA法律事務所は、このたび、代表弁護士 道下剣志郎によるLegal Update第15弾として、「株式譲渡契約(SPA)で確認すべき重要条項――価格調整、表明保証、補償、責任制限、クロージング条件及び紛争解決の実務【2026年版】」を公開いたしました。
株式譲渡契約は、単に株式の譲渡価額を記載するための契約書ではありません。M&Aにおいて、デューデリジェンスで把握したリスク、規制上の制約、資金調達条件及び当事者の商業的期待を、最終的に法的責任へ変換する中核文書です。
DDで認識した問題は、SPAのどこかに必ず反映させる必要があります。税務リスクであれば特別補償、重要顧客の同意であればクロージング条件、サイバーセキュリティ上の是正事項であればPre-Closing Covenant又はPMI、運転資本をめぐる不確実性であれば価格調整条項というように、論点ごとに適切な法的処理を設計します。
クロスボーダーM&Aでは、Completion Accounts、Locked Box、Leakage、Earn-out、Knowledge Qualifier、Disclosure、Sandbagging、Basket、Cap、Survival Period、MAC、W&I Insurance等、各国で用いられる概念の意味や前提が必ずしも一致しません。そのため、条文を英訳又は和訳するだけでは足りず、当事者がどのリスクをどこまで負担するのかという実質的な合意を一つの法的構造に落とし込む必要があります。
本稿では、2026年9月24日時点の日本法及び公的資料を踏まえ、日本企業の株式取得に関するSPAを交渉する買主、売主、PEファンド、事業会社、General Counselその他の実務家が確認すべき主要条項を体系的に整理します。
本稿の要旨
SPAは、DD結果を価格、表明保証、補償、誓約、クロージング条件、解除及びクロージング後の責任へ変換する最終的なリスク配分文書です。SPAの条項は相互に関連しており、表明保証だけ、補償だけ、価格だけを切り離して検討することは適切ではありません。
価格条項では、Headline Priceだけでなく、Cash、Debt、Debt-like Items、Working Capital、Leakage、Earn-out、取引費用その他をどのように扱うかを定める必要があります。Completion AccountsとLocked Boxでは、経済的リスクが移転するタイミングと紛争ポイントが大きく異なります。
既知の重大リスクについて、一般的な表明保証だけに依存するべきではありません。特別補償、価格調整、Escrow、Holdback、クロージング前是正又はCP等の個別対応を検討する必要があります。
責任制限条項は、De Minimis、Basket、Cap、Survival Period、除外事由、Mitigation、保険金その他の回収、Fraud Carve-out、W&I保険等を一つの体系として読む必要があります。
SigningとClosingの間に期間がある場合、CP、Regulatory Approval、Pre-Closing Covenant、MAC、解除権、Long Stop Dateを整合的に設計する必要があります。買主は企業価値を保全する必要がある一方、クロージング前に対象会社を実質的に支配すればGun Jumpingその他の競争法上の問題が生じ得ます。
SAKURA法律事務所及び代表弁護士 道下剣志郎は、SPAの交渉において、定型条項を増やすことではなく、対象会社の事業価値とDDで判明した重要リスクを踏まえ、価格・クロージング確実性・クロージング後責任のバランスを明確に設計することが重要であると考えています。
1 SPAはM&Aのリスク配分文書である
M&Aにおける経済条件は、譲渡価額だけでは決まりません。同じ100億円の買収であっても、価格調整、補償、責任上限、Disclosure、クロージング条件、解除権等の内容によって、買主と売主の実質的なリスク負担は大きく異なります。
したがって、SPAはDDと切り離して作成するものではありません。DDで把握したリスクを、誰が、どの金額まで、どの期間負担するのかという形に変換することがSPAの中心的役割です。
2 何を譲渡するのかを正確に定義する
SPAでは、対象会社、譲渡株式数、株式の種類、売主の権原及び関連する新株予約権その他の権利を明確に特定します。
非上場会社では譲渡制限株式、種類株式、新株予約権、転換証券、株主間契約等が存在する場合があります。買主が取得する経済的・議決権上の権利を正確に確認する必要があります。
Definitions条項も実質的に重要です。Leakage、Permitted Leakage、Loss、Knowledge、Material Contract、Indebtedness、Working Capital等の定義によって、後続条項の権利義務が大きく変わります。
3 譲渡価額――Headline Priceだけでは不十分
SPAでは、企業価値から株式価値へどのように調整するかを定めます。Cash、Debt、Debt-like Items、Working Capital、取引費用等の扱いが中心になります。
クロスボーダー案件では、支払通貨、送金手数料、資金移動、為替変動、源泉徴収その他の実務も明確化する必要があります。
価格条項は財務・会計論点と法務論点が交差するため、FA・会計士・税理士との連携が重要です。
4 Completion Accounts――クロージング後の価格調整
Completion Accounts方式では、クロージング時点の貸借対照表その他の財務数値を基準として、クロージング後に譲渡価額を調整します。
SPAでは、適用する会計原則、その優先順位、個別の会計方針、計算手続、買主・売主のレビュー権、異議申立期間及び独立会計士による紛争解決等を定めます。
実務上は、Debt-like Item、未払費用、引当金、前受収益、取引費用等の分類をめぐり紛争が生じやすいため、定義及び具体的計算ルールを精緻に設計する必要があります。
5 Locked Box――価格確定性とLeakage管理
Locked Box方式では、過去の基準日時点の財務諸表等を基礎に価格を固定し、原則としてクロージング後の広範な価格調整を行いません。
その代わり、Locked Box Dateからクロージングまでに対象会社から売主又はその関係者へ価値が流出しないようLeakageを規制します。
配当、役員報酬、関連当事者支払、Management Fee、債務免除等をLeakageとして定義し、Permitted Leakageを限定列挙するなど、対象会社の価値保全を具体的に設計します。
6 Earn-out――将来業績で価格差を埋める
買主と売主の企業価値評価が一致しない場合、将来の売上高、EBITDA、顧客維持、開発マイルストーン等に応じて追加対価を支払うEarn-outを利用することがあります。
もっとも、クロージング後は買主が対象会社を支配するため、買主の経営判断によってEarn-outの達成可能性が変化します。
計算指標、会計方針、測定期間、情報提供、事業運営義務、例外事項、紛争解決等を詳細に定める必要があります。
7 Escrow・Holdback――請求権だけでなく回収可能性を確保する
補償請求権が存在しても、売主に資力がなければ回収できません。そこで、譲渡対価の一部をEscrow又はHoldbackとして留保することがあります。
金額、期間、解除条件、請求手続、W&I Insuranceとの関係等を、責任制限条項と一体として設計します。
PEファンドその他クロージング後に資金を分配する売主では、実際の回収可能性の確保が特に重要です。
8 SigningとClosingを区別する
SigningとClosingが同日でない取引では、契約締結後に規制当局承認、第三者同意、融資、社内承認その他の条件を満たしてからクロージングします。
SPAでは、Signing時に発生する義務、Closingまでの義務、Closing Deliverables及びClosing後の義務を明確に分けます。
外為法、企業結合審査、業法上の承認等が必要なクロスボーダー案件では、この期間設計が取引確実性へ直接影響します。
9 Conditions Precedent――何が整えばクロージングするのか
CPには、規制当局承認、外為法、企業結合審査、重要契約の同意、社内承認、担保解除、知財権移転その他が含まれ得ます。
各条件について、誰が充足責任を負うのか、どの程度の努力義務を負うのか、Waiverが可能か、期限はいつかを明確化します。
主観的なCPを広く設定すると、クロージング義務自体が不安定になるため、可能な限り客観的基準を用いることが重要です。
10 Regulatory Approvalと努力義務
規制当局への届出・承認が必要な場合、提出主体、協力義務、情報共有及び当局対応を定めます。
グローバルM&Aでは、日本の外為法・企業結合審査と海外の競争法・FDI審査を一つのタイムラインで管理する必要があります。
当局から事業売却、行動措置その他のRemedyを求められた場合に、買主がどこまで受け入れる義務を負うかについても案件によって明示する必要があります。
11 Long Stop Dateと解除権
Long Stop Dateは、一定期日までにClosingできなかった場合に取引から離脱できる最終期限です。
規制審査が延長した場合の自動延長、解除権者、当事者の債務不履行が原因の場合の解除制限等を定めます。
規制当局審査が重要な案件では、非現実的に短いLong Stop Dateを設定すると紛争原因となります。
12 Pre-Closing Covenant――価値保全とGun Jumpingのバランス
Signing後Closingまで、売主に対し通常の事業運営を求め、大規模設備投資、新規借入、配当、重要契約、役員報酬変更、資産処分等を制限することがあります。
ただし、買主はClosing前には対象会社の株主ではありません。過度な事前支配は競争法上のGun Jumpingその他の問題を生じ得ます。
買主による同意事項は、企業価値を保全する合理的範囲に限定し、対象会社の日常的経営を過度に制約しない設計が必要です。
13 MAC条項
MAC条項は、Signing後Closing前に重大な悪化が生じた場合、一定の条件下で買主にClosing拒絶又は解除の権利を与える仕組みです。
景気、市場、業界、戦争、感染症、法改正等を除外しつつ、対象会社に不均衡な影響が生じた場合のみ除外から外す等の設計が用いられます。
MACはClosing確実性を大きく左右するため、抽象的な文言だけでなく、何を重大な悪化と評価するかを慎重に検討します。
14 表明保証――情報リスクを配分する
売主の表明保証は、権限、株式、資本構成、財務、重要契約、許認可、労務、税務、知財、個人情報、訴訟、法令遵守等について設定されます。
表明保証は、買主が得られない情報リスクを売主へ配分する機能を持ちます。
ただし、対象会社の企業価値が特定の技術・許認可・顧客等に依存する場合には、一般的な定型条項だけでなく当該案件固有の表明保証を設ける必要があります。
15 Fundamental Warranty
株式権原、売主権限、資本構成等は、取引の法的基盤に関わるFundamental Warrantyとして一般表明保証と異なる取扱いを受けることがあります。
より高いCap、長いSurvival Period、Materiality除外等を設定する場合があります。
何をFundamental Warrantyとするかは、契約上明確に定義すべきです。
16 Knowledge Qualifier
「売主の知る限り」等のKnowledge Qualifierは、表明保証責任を大きく左右します。
誰の知識を会社又は売主のKnowledgeとみなすのか、Actual Knowledgeのみか、合理的調査により知り得た事項まで含むのかを定義します。
創業者、CEO、CFO、法務、人事、事業責任者等、案件に応じたKnowledge Groupの設計が重要です。
17 MaterialityとMateriality Scrape
表明保証にMaterial、Material Adverse Effect等の限定を付す場合があります。
買主側は、違反認定又は損害算定においてMateriality限定を無視するMateriality Scrapeを求めることがあります。
Materialityを違反認定と損害額の双方で無視するのか、いずれかのみかを明確にします。
18 Disclosure――表明保証保護の実質を決める
売主はDisclosure Letter、Schedule又はData Roomによって表明保証を限定することがあります。
有効なDisclosureの基準を明確にしないと、売主が大量資料をData Roomへ投入しただけで広範な免責を主張する可能性があります。
Fair Disclosureの水準、データルーム全体をDeemed Disclosureとするか、Signing直前のアップロードを認めるか等を明示することが重要です。
19 Bring-down
SigningとClosingが分離する場合、Closing時にも表明保証が真実であることを求めるBring-down条項を設けることがあります。
すべての表明保証について完全な真実性を要求するのか、Materiality基準を設けるのか、Closingまでの通常変化をどう扱うかを定めます。
Bring-down、更新Disclosure及びTerminationの関係を一体で設計します。
20 Sandbagging
買主がClosing前に表明保証違反を知っていたにもかかわらずClosingし、後から補償請求できるかというSandbaggingの問題があります。
SPAでPro-Sandbagging、Anti-Sandbaggingのいずれを採用するかを明示することで、後日の解釈紛争を減らせます。
DDで問題を認識しつつ損害又は法的効果が不確定な場合もあるため、買主Knowledgeの扱いは特に重要です。
21 補償条項
補償条項は、表明保証違反、誓約違反、特定リスク及び第三者請求について、誰がどの範囲の損害を負担するかを定めます。
Lossの定義、因果関係、Mitigation、Double Recovery、保険金、税効果、第三者回収、間接損害等を整理します。
第三者請求については、通知、訴訟防御、和解権限、情報提供等の手続を別途設けます。
22 De Minimis・Basket・Cap
De Minimisは個別少額請求を排除し、Basketは累積損害の一定額まで請求を制限し、Capは総責任額を限定します。
BasketにはDeductible型とTipping型があり、経済効果が異なります。
Fundamental Warranty、税務、特別補償、Fraud等について一般制限の適用を除外する場合があります。
23 Survival Period
表明保証・補償請求の期間は、一般表明保証、税務、Fundamental Warranty等で異なることがあります。
契約上の期間と民法その他の法定時効は別に検討する必要があります。
期限までに通知すればよいのか、請求額まで特定する必要があるのか等、Notice条項と整合させます。
24 特別補償
DDで既に判明している税務、訴訟、労務、知財、許認可その他のリスクは、一般表明保証ではなく特別補償で処理することがあります。
Cap、Basket、Survival Periodの適用を一般補償と別にする場合があります。
既知リスクについては、価格、是正、特別補償その他の手段のどれが最も合理的かを検討します。
25 Fraud・故意等のCarve-out
責任制限からFraud、故意、意図的秘匿等を除外することがあります。
Carve-outの範囲によって、Cap、Survival Period、Exclusive Remedy等の制限が適用されるかが変わります。
海外契約のFraud概念をそのまま日本法契約へ輸入せず、準拠法上の意味を確認する必要があります。
26 W&I Insurance
W&I保険は、表明保証違反リスクの一定範囲を保険会社へ移転する仕組みで、PE案件や競争入札で利用されます。
もっとも、既知リスク、DD未実施分野、将来予測等は除外される場合があります。
SPA、Disclosure及び保険証券を一体として設計し、保険でカバーされない既知リスクには別の保護を設ける必要があります。
27 税務補償・Tax Covenant
クロージング前期間の税務責任について、税務表明保証とは別にTax Covenant又はTax Indemnityを設ける場合があります。
税務調査、申告、和解、情報提供、税務選択等の主導権を定めます。
価格調整、補償、W&I保険及び税務保険との整合も重要です。
28 競業避止・勧誘禁止
売主による競業又は従業員・顧客の勧誘を一定期間制限することがあります。
日本法上、競業避止の有効性は、期間、地域、事業範囲、必要性、売主への影響等を踏まえて合理性が判断されます。
取得した企業価値を保護するために必要な範囲に限定することが重要です。
29 秘密保持・公表
取引公表、プレスリリース、従業員・顧客への説明等を誰がどのタイミングで行うかを定めます。
上場会社では適時開示その他の法令上の義務が契約上の承認権に優先します。
クロスボーダー案件では、時差・言語・複数当局対応を踏まえた公表プロセスを設計します。
30 クロージング実務
Closingでは、株式譲渡、代金支払、株主名簿更新、株券交付、役員変更、担保解除、取締役会・株主総会手続等を同時並行で行います。
銀行権限、電子証明書、印鑑、IT管理者権限等、法的支配と実務上の管理権限が同時に移転するようClosing Checklistを作成します。
クロスボーダー案件では、送金Cut-off、為替、各国祝日等も考慮します。
31 準拠法・紛争解決
準拠法及び紛争解決はBoilerplateではありません。最終判断をどこで執行するかまで考慮して選択します。
対象会社・証拠・資産が日本にある場合は日本裁判が合理的なことがあります。他方、国際仲裁は中立性、秘密性、外国での執行等の観点から有用です。
仲裁の場合は仲裁機関、仲裁地、言語、仲裁人員数等を明確に定めます。
32 日英二言語SPAと優先言語
国際M&Aでは英語SPA又は日英二言語SPAを作成することがあります。
二言語契約では、齟齬が生じた場合の優先言語を明示することが重要です。
逐語訳に拘泥せず、双方の文言が同一の法的意味を表すよう作成する必要があります。
33 上場会社M&Aとの関係
上場会社の買収では、SPAだけでなく公開買付規制、大量保有報告、インサイダー取引、証券取引所規則、対象会社取締役会の対応等が関係します。
経済産業省の2023年「企業買収における行動指針」は引き続き重要な指針であり、2026年6月には同指針の解釈、ポイント及びQ&Aの各案がパブリックコメントに付されています。
2026年9月24日時点では、2023年の確定指針と、2026年に公表された案・検討資料を区別して取り扱う必要があります。
34 買主側の交渉優先順位
買主は価格確実性、情報の正確性、十分なRecourse、規制リスク、Closing確実性、既知リスク保護を重視します。
もっとも、理論上考えられる全ての保護を同じ強度で要求すれば交渉が硬直化します。
企業価値及びDD上のRed Flagに直結する条項へ交渉資源を集中させることが重要です。
35 売主側の交渉優先順位
売主は価格確実性、Closing後責任の限定、明確なDisclosure、短い請求期間、Cap及びClean Exitを重視します。
PE売主ではW&I保険を用いたLimited Recourseを重視する場合があります。
事業会社売主では、Transition Service、共有資産、ブランド、従業員その他の継続関係について追加条項が必要になることがあります。
36 SAKURA法律事務所が考えるSPA交渉
SAKURA法律事務所及び代表弁護士 道下剣志郎は、SPAを、取引の経済条件、DD結果及び規制上の制約を法的責任へ変換する設計図と位置付けています。
重要なのは条項数を増やすことではなく、対象会社の価値を左右するリスクを特定し、そのリスクをどちらが、どの金額まで、どの期間負担するかを明確にすることです。
SAKURA法律事務所では、日本企業及び外国企業のM&A、クロスボーダー取引、法務DD、SPA・株主間契約、外為法、企業結合審査、AI・IT、個人情報、知財、労務、危機管理等について、案件初期からClosing・PMIまで一貫して支援しています。
37 よくあるご質問
Q1 SPAは単に株式を譲渡する契約ですか。
いいえ。価格、情報リスク、規制リスク、Closing前リスク及びClosing後責任を買主と売主の間で配分する中核文書です。
Q2 Completion AccountsとLocked Boxはどちらが有利ですか。
一律には決まりません。Completion AccountsはClosing時の実績へ調整でき、Locked Boxは価格確実性が高い反面、Leakage管理が重要になります。
Q3 表明保証があればDDは簡略化できますか。
一般には推奨されません。表明保証にはDisclosure、Cap、Survival Period、Knowledge等の制約があり、DDと契約保護を組み合わせる必要があります。
Q4 DDで判明した既知リスクはどう処理すべきですか。
特別補償、価格調整、Escrow、Closing前是正、CPその他、リスクの性質に応じた個別処理を検討します。
Q5 BasketとDe Minimisは何が違いますか。
De Minimisは個別の少額請求を排除し、Basketは累積請求額が一定閾値を超えるまで回収を制限する仕組みです。
Q6 MACがあればいつでも買主は取引から離脱できますか。
いいえ。MACの定義、除外事項、Materiality及び具体的事実によります。抽象的なMAC条項だけで容易に解除できるとは限りません。
Q7 Signing後、買主は対象会社の重要事項を承認できますか。
一定のPre-Closing Covenantは可能ですが、過度な支配はGun Jumping等の問題を生じ得ます。通常の事業運営とのバランスが必要です。
Q8 W&I保険があれば売主責任はなくなりますか。
必ずしもそうではありません。既知事項、DD未実施事項等は保険対象外となる場合があり、SPAとの関係も個別に確認します。
Q9 クロスボーダーSPAは日本法を準拠法にすべきですか。
一律ではありません。対象会社、資産、執行可能性等を踏まえて判断します。もっとも、外為法、競争法、会社法その他の強行的規律は準拠法選択だけでは排除できません。
Q10 日英二言語SPAではどちらを優先言語にすべきですか。
どちらでも可能ですが、齟齬が生じた際の優先言語を必ず明記し、双方の文言が同一の法的意味を持つよう作成する必要があります。
38 代表弁護士 道下剣志郎「Legal Update」について
SAKURA法律事務所では、代表弁護士 道下剣志郎のプロフィールページにおいて「Legal Update」を継続的に公開し、M&A、企業法務、国際取引、AI・IT、個人情報、知的財産、危機管理、労働、公益通報、Web3・金融規制その他、企業経営に重要な法的テーマについて情報を発信しています。
第15弾となる本稿は、第13弾「外国企業が日本企業を買収する際のM&A法務」及び第14弾「M&Aにおける法務デューデリジェンス」に続き、DDで把握したリスクと取引条件を最終契約へ落とし込むSPA実務を体系的に整理するものです。
今後も、表明保証違反、日本での国際訴訟、外国判決の承認・執行、国際仲裁その他のテーマについて順次Legal Updateを公開する予定です。
39 M&A・SPAに関してご相談いただける事項
SAKURA法律事務所では、日本企業及び外国企業のM&Aについて、株式譲渡契約、事業譲渡契約、株主間契約、JV契約その他の取引文書の作成・レビュー・交渉を行っています。
価格調整、表明保証、Disclosure、補償、責任制限、CP、外為法・企業結合審査、Pre-Closing Covenant、W&I保険、Closing実務及びClosing後の義務まで一貫して対応します。
クロスボーダー案件については、海外本社、General Counsel、M&A担当者、投資委員会、海外法律事務所、FA、会計士・税理士等と英語で連携し、日本法上の論点をグローバル案件工程へ組み込む支援も行っています。
40 お問い合わせ
M&A、SPA、法務デューデリジェンス、外為法、企業結合審査、クロスボーダー取引その他の企業法務・国際法務に関するご相談は、SAKURA法律事務所までお問い合わせください。
お問い合わせの際には、ご相談内容に「M&A・SPAに関する相談」とご記載いただけますと、担当弁護士へのご案内が円滑です。
SAKURA法律事務所
代表弁護士 道下 剣志郎
〒106-0032 東京都港区六本木一丁目4番5号 アークヒルズサウスタワー4F
電話 03-6910-0692
本記事の執筆・監修
SAKURA法律事務所
代表弁護士 道下 剣志郎
主な参考資料
経済産業省「企業買収における行動指針」(2023年8月31日)
経済産業省「企業買収における行動指針」の解釈・ポイント・Q&A各案(2026年6月公表・パブリックコメント資料)
金融庁「公開買付制度・大量保有報告制度等に関する2026年改正関連資料」
財務省「対内直接投資審査制度」及び2026年改正外為法関連資料
※本記事は、2026年9月24日時点における法令、公的資料及び一般的なM&A実務を基礎として、一般的な法的情報を提供することを目的とするものです。個別具体的なM&A案件について法的助言又は法律上の結論を示すものではありません。価格調整、表明保証、Disclosure、補償、責任制限、クロージング条件、競業避止、準拠法・紛争解決その他の契約条件は、対象会社、取引ストラクチャー、買主・売主の属性、上場・非上場、規制環境、DD結果その他の個別事情によって異なります。また、2026年6月に経済産業省が公表した「企業買収における行動指針」の解釈・ポイント・Q&Aの各資料は、2026年9月24日時点でパブリックコメントに付された案・検討資料を含み、2023年の確定した指針そのものとは区別して取り扱う必要があります。具体的案件については、取引時点の法令・規則・ガイドライン及び最新の公的資料を確認した上で個別に検討する必要があります。