SAKURA法律事務所は、このたび、高等裁判所の判決に対する最高裁判所への民事上告及び上告受理申立てについて、相談及び事件受任の体制を整備し、最高裁上告事件への対応を開始いたしましたので、お知らせいたします。
高等裁判所で敗訴した場合、担当弁護士から「このあたりが潮時です。最高裁に上告しても、基本、無駄ですから」といった趣旨の説明を受けることがあります。そのように言われれば、長い訴訟を続けてきた当事者が、これ以上は争えないのではないかと感じるのも無理はありません。また、実際に最高裁への上告を検討しようとしても、民事上告を積極的に受任する弁護士を新たに探すことは容易ではありません。
もっとも、最高裁への上告が「狭き門」であることと、上告を検討する意味がないこととは同じではありません。重要なのは、高等裁判所までに認定された事実関係を前提として、原判決に最高裁判所が判断すべき法律上の問題が存在するかを見極めることです。
上告は「狭き門」です
最高裁判所への上告は、第一審及び控訴審の延長線上で、もう一度同じ主張や証拠を提出して事実関係を争う手続ではありません。民事訴訟法上の上告は、憲法の解釈の誤りその他の憲法違反や、法律上定められた重大な訴訟手続上の違反等を理由とするものです。他方、上告受理申立ては、原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他、法令の解釈に関する重要な事項を含むと最高裁判所が認める事件について、最高裁判所が上告審として受理することのできる制度です。
裁判を受ける権利は憲法32条によって保障されていますが、憲法81条が予定する憲法判断を除き、いかなる事由を最高裁への上告理由として認めるかは審級制度の問題であり、立法政策に委ねられるとする最高裁判例があります(最高裁平成13年2月13日第三小法廷判決・裁判集民事201号95頁、判例時報1745号94頁)。現在の上告制度が厳格な要件を採る背景には、この審級制度の構造があります。
最高裁判所が公表した2024年の民事上告受理事件の統計では、新たに受け付けられた事件(新受)は2,456件、同年中に終局した事件(既済)は2,397件でした。既済事件のうち、不受理決定によって終局したものは2,356件で、既済事件全体の約98.3%を占めます。新受件数と既済件数は同一の事件群ではないため、これらの数字から個々の申立ての厳密な「受理率」を算出することはできませんが、上告受理申立てが極めて「狭き門」であることは、統計からも明らかです。
上告審で求められるのは、事実を法律問題へと再構築する力です
高等裁判所までの訴訟では、証人の供述、契約締結の経緯、当事者間のやり取り、各種証拠の信用性その他の事実関係が審理の大きな部分を占めます。これに対して最高裁判所では、原判決において適法に確定された事実を前提に、そこにどのような法令解釈上の問題が存在するのか、原判決の判断が従来の判例法理とどのような関係に立つのか、さらに、その問題について最高裁判所が法解釈を示す必要がなぜあるのかを論じなければなりません。
当事務所所属の金山直樹弁護士は、この作業を「事実関係を高度な法律問題へと昇華させ、法律構成として再構築する能力」と表現しています。単に「一審・二審の事実認定が間違っている」と主張するだけでは足りず、個別の事実を最高裁判所が取り上げるべき法律問題へと高めることが必要です。
最高裁判所調査官を意識した説得的な理由書
最高裁判所には調査官が置かれ、上告事件等について調査し、裁判官の審理を補佐しています。上告担当弁護士にとっては、多数の事件を扱う調査官に対し、原判決のどの法的判断が従来の判例とどのように矛盾し、又はどのような法令解釈上の重要問題を含むのかを、理由書の冒頭から明快かつ簡潔に示すことが重要です。金山弁護士がいう「多忙を極める調査官の知性を刺激してその関心を引く」ためには、深い法律論と、それを一読して理解できる形にする文章力の双方が求められます。
判例の先にある「法の発展」を論じる
原判決が明確に最高裁判例と相反する場合には、その判例違反を論じることが重要です。しかし、原判決が既存の判例や通説を形式的に適用した結果、なお看過できない不合理が生じている事件もあります。そのような場合には、判例・学説を全体的な構造の中で捉え、そこに通底する理論を発見し、その理論を起点として判例をさらに展開・発展させる道筋を示すことが必要となる場合があります。
その際に重要となるのが、金山弁護士が述べる「法の発展(法の創造性)」という動的な視点です。法の発展の背景には、時代や社会の変化があります。上告理由書・上告受理申立て理由書では、社会の変容に伴い法解釈をどのように発展させるべきか、その判断が将来の裁判実務や社会にどのような政策的インプリケーションを持つのかまで視野に入れ、「どのような社会にしたいのか」という法の方向性を説得的に示すことが重要となる場合があります。
上告は「時間との闘い」です
高等裁判所の判決に対する上告又は上告受理申立ては、判決正本を受け取った日又は受け取ったとみなされる日の翌日から起算して、原則として2週間以内に行わなければなりません。理由を上告状又は上告受理申立書に記載していない場合には、その後、裁判所から所定の通知を受け取った日又は受け取ったとみなされる日の翌日から起算して、原則として50日以内に理由書を提出する必要があります。
当事者は、最高裁まで争うか否かを短期間で決めなければならず、受任した弁護士は、その後の限られた期間に、一審・二審の裁判記録を精査し、判例・学説を調査し、原判決の法的問題を抽出して、最高裁判所に提示すべき理由書を完成させなければなりません。上告は、まさに「時間との闘い」です。
SAKURA法律事務所における最高裁上告事件への対応
高等裁判所で不利な判決を受けた場合には、現在の担当弁護士と善後策を協議すると同時に、できる限り早い段階でSAKURA法律事務所へご相談ください。当事務所では、判決内容及びこれまでの訴訟経過を確認し、最高裁において十分に争う余地があるか、どのような法的論点が考えられるかについて検討します。結果を断定することはできませんが、最高裁で主張すべき法律問題が見いだせるかについて、可能な限り明確にお伝えします。
当事務所が事件を受任する場合には、第一審・控訴審の判決、当事者双方の主張書面、証拠その他の訴訟記録をゼロベースで精読します。また、依頼者との面談を重視し、必要に応じて繰り返し直接お話を伺いながら、事件の核心がどこにあるのかを見極めます。
SAKURA法律事務所には、慶應義塾大学名誉教授として長年にわたり民法学・契約法・時効法・比較法等の研究及び教育に携わってきた金山直樹弁護士や、裁判官として裁判実務を経験した弁護士が所属しています。裁判実務と法理論の双方から高裁判決を批判的に検討し、案件の性質に応じて適切な担当体制を組み、完成度の高い上告理由書・上告受理申立て理由書の作成を目指します。
もっとも、最高裁上告事件は極めて限定された要件の下で審理されるものであり、当事務所にご相談又はご依頼いただいた場合であっても、上告受理や原判決の破棄を保証することはできません。記録を検討した結果、最高裁において争うための十分な法的根拠を見いだすことが難しいとの見解をお伝えする場合もあります。
高等裁判所の判決を受け、「この判決で本当に終わりなのか」「最高裁まで争うべきか」「現在の代理人とは別の視点から意見を聞きたい」とお考えの場合には、判決正本がお手元に届いた段階で、一日でも早くご相談ください。
最高裁上告事件に関するお問い合わせ
最高裁判所への民事上告、上告受理申立て、上告理由書・上告受理申立て理由書の作成、最高裁段階からの訴訟代理その他のご相談は、SAKURA法律事務所までお問い合わせください。
お問い合わせの際には、「最高裁上告事件に関する相談」である旨、高等裁判所の判決言渡日、判決正本の送達日、現在の代理人の有無その他分かる範囲の情報をご記載ください。上告期限が迫っている場合には、その旨も併せてお知らせください。
なお、お問い合わせ又は法律相談のお申込みをいただいたこと自体により、上告又は上告受理申立ての法定期間が停止又は延長されるものではありません。期限が迫っている場合には、現在の代理人又は判決をした裁判所にも直ちに期限をご確認ください。
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統計出典:最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」における2024年の民事上告受理事件の新受件数及び既済状況。