お知らせ

NEWS

2026.10.15

お知らせ

【SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下剣志郎 Legal Update】セキュリティトークン(STO)の法務と実務――電子記録移転権利、第一種・第二種金商業、発行開示、カストディ、トークン化不動産及び二次流通【2026年版】について公開いたしました。

SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下剣志郎 Legal Update

2026年10月1日(2026年10月16日訂正)

SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下 剣志郎

SAKURA法律事務所は、このたび、代表弁護士 道下剣志郎によるLegal Update第28回として、「セキュリティトークン(STO)の法務と実務――電子記録移転権利、第一種・第二種金商業、発行開示、カストディ、トークン化不動産及び二次流通【2026年版】」を公開いたしました。

セキュリティトークン(Security Token。以下「ST」)は、ブロックチェーンその他の電子的な仕組みを用いて有価証券又は有価証券性を有する権利を表章・移転するものです。しかし、STOを検討する際に最初に見るべきものは、ブロックチェーンの種類でも、トークン規格でもありません。最初に確定すべきは、トークンが「何の権利を表しているのか」、その権利が金融商品取引法上どの有価証券類型に属するのか、誰が発行し、誰が勧誘し、誰が保管し、どのように移転・決済されるのかという法的構造です。

日本では、株式・社債等の第一項有価証券をトークン化したものは引き続き第一項有価証券として扱われます。また、信託受益権、集団投資スキーム持分その他の第二項有価証券に係る権利であっても、電子情報処理組織を用いて移転可能な財産的価値に表示され、流通性を抑制する所定の除外要件を満たさないものは「電子記録移転権利」として第一項有価証券と同等の規律を受けます。他方、所定の投資家属性及び移転制限等を備える「適用除外電子記録移転権利」は、第二項有価証券としての取扱いが残ります。この分類の違いが、第一種・第二種金融商品取引業、発行開示、私募設計、販売チャネル、投資家層、二次流通の可否を左右します。

ST市場は発行実務だけの段階を越えつつあります。日本証券業協会と日本STO協会は電子記録移転有価証券表示権利等の取扱状況を月次で公表しており、2026年3月25日には大阪デジタルエクスチェンジ株式会社のPTS「START」で、本邦初の個人投資家向けST社債の二次売買が開始されました。STOは、資金調達のデジタル化にとどまらず、発行者審査、投資家保護、秘密鍵管理、システムリスク、市場監視、決済、二次流通を含む資本市場インフラの設計へと進んでいます。

本稿では、2026年10月1日時点の金融商品取引法、関係内閣府令、金融庁の監督指針・登録手続ガイドブック、日本STO協会の自主規制、国土交通省の不動産特定共同事業関連資料及び二次流通市場の最新動向を踏まえ、発行体、証券会社、金融機関、アセットマネージャー、不動産事業者、FinTech・Web3企業、海外事業者及びGeneral CounselがSTOを実際に組成・販売・運用する際に検討すべき法的論点を、発行前のスキーム設計から二次流通まで一連の実務として整理します。

本稿の要旨

STOの規制分析は、まず基礎となる権利を特定するところから始まります。株式・社債等をトークン化したものは第一項有価証券として扱われ、信託受益権・集団投資スキーム持分等の第二項有価証券をトークン化したものは、原則として電子記録移転権利として第一項有価証券と同等の規律を受けます。もっとも、投資家属性の限定や、移転ごとに発行者の承諾を必要とする技術的措置等、定義府令所定の要件を満たす場合には、適用除外電子記録移転権利として第二項有価証券の枠組みに残る可能性があります。

STの売買、媒介、取次ぎ、代理、募集・売出しの取扱い等を業として行う主体の登録区分は、対象有価証券の分類と業務内容によって決まります。電子記録移転権利やトークン化された第一項有価証券の取扱いは原則として第一種金融商品取引業の領域となり、適用除外電子記録移転権利等は第二種金融商品取引業の枠組みで取り扱われる余地があります。発行者の自己募集についても、元となる権利の種類によって登録要否が異なるため、「発行体自身なら無登録でよい」と一律に整理することはできません。

電子記録移転権利は発行開示等について第一項有価証券と同等の規律を受けるため、公募に該当する場合には発行開示及び継続開示を正面から検討する必要があります。STOでは、法定開示書類、契約書、信託約款・社債要項、営業資料、ウェブサイト、スマートコントラクトの仕様及び実際の権利移転ロジックが相互に整合していなければなりません。技術上の挙動と法的権利がずれることは、通常の証券発行にはない固有の法的リスクです。

金融庁の監督指針は、STを取り扱う金融商品取引業者に対し、発行者の事業・財務のみならず、ブロックチェーン等のネットワーク、秘密鍵管理、分別管理、流出リスク、投資家の理解度、広告表示、取引開始基準等を含めた態勢整備を求めています。したがって、STOにおけるデューデリジェンスは、証券法務と技術監査を別々に行うのではなく、最終的に「権利が法的文書どおりに発行・移転・償還されるか」という一点で統合する必要があります。

二次流通を予定する場合、STOはさらに複雑になります。PTSでの取引を想定するなら、発行条件、移転制限、投資家属性、カストディ、価格形成、決済、市場監視、開示更新、システム接続を発行時から二次市場に耐える形で設計しなければなりません。流通性はSTの価値を高め得る一方、同時に第一項有価証券としての投資家保護・市場公正性の要請を強くします。

1 基礎となる権利とトークン化による規制上の変化を確定する

STOという言葉は実務上便利ですが、金融商品取引法上「STO」という独立の有価証券類型が存在するわけではありません。法的分析では、株式、社債、信託受益権、匿名組合その他の集団投資スキーム持分、合同会社の社員権、不動産特定共同事業契約上の権利等、トークンの背後にある権利をまず特定し、その権利が金融商品取引法第2条上どの有価証券類型に位置付けられるかを確認します。

この順序が重要なのは、トークン化が元の権利の法的性質を消すものではないからです。たとえば社債をトークン化しても、その商品は社債としての会社法上の規律、社債要項、社債原簿、元利金支払、償還その他の制度を離れるものではありません。同様に、不動産信託受益権をトークン化しても、信託契約、受益権の内容、裏付不動産、信託配当、信託終了時の処理等がSTの実体を構成します。ブロックチェーンは権利を記録・移転するインフラであり、権利そのものの法的根拠を代替するものではありません。

第一項有価証券である株式、社債、投資信託受益証券等を電子的に表章した場合、当該権利は引き続き第一項有価証券として扱われます。これに対し、集団投資スキーム持分、信託受益権等の第二項有価証券に係る権利について、電子情報処理組織を用いて移転できる財産的価値に表示されるものは、金融商品取引法第2条第3項の「電子記録移転権利」に該当し得ます。電子記録移転権利は、技術によって従来より高い流通性を持ち得ることから、募集・売出しに係る開示規制や取扱業者の規制について、第一項有価証券と同等の取扱いを受けるのが制度の基本です。

もっとも、定義府令第9条の2は、保有者の属性を限定し、権利移転の都度、権利者の申出と発行者の承諾を要する技術的措置等を備える場合など、流通性が抑制されている一定の権利を電子記録移転権利から除外しています。これがいわゆる適用除外電子記録移転権利です。金融庁の監督指針は、単なる契約上の譲渡制限や、譲渡契約の成立と同時に自動的に発行者の承諾があったものとみなす仕組みでは足りない旨を明確にしています。

実務上、この区別は形式的なラベルではなく、販売スキームの根幹です。第一種金商業の体制を構築するのか、第二種金商業の枠組みを利用するのか、私募で限定的に組成するのか、将来の二次流通を認めるのかという事業判断は、最初の権利設計と不可分です。

2 各主体の登録と発行開示を同じ事業構造に沿って設計する

STOでは、発行体、SPC、信託銀行、証券会社、アセットマネージャー、販売会社、プラットフォーム事業者、カストディ事業者、システム提供者等が関与するため、ライセンス分析は法人単位ではなく、各主体が実際に行う行為ごとに行う必要があります。電子記録移転権利やトークン化された第一項有価証券の売買、媒介、取次ぎ、代理、募集・売出しの取扱い等を業として行う場合、第一種金融商品取引業の登録が中心的な論点となります。

一方、適用除外電子記録移転権利等の第二項有価証券については第二種金融商品取引業の規制が中心となり得ます。また、発行者自身が行う自己募集・私募についても、株式・社債の発行とファンド持分の自己募集とでは規制の出発点が異なります。金融庁の英語版FinTechサポートデスクFAQも、発行者が電子記録移転権利の募集・私募を行う場合には第二種登録が必要となる旨を示しています。したがって、「発行者だから無登録」「販売会社だから第一種」といった一行の整理では足りません。勧誘、契約締結、受注、媒介、決済指図、保管、投資運用その他の機能を業務フローに落とし込み、どの行為がどの登録業務に該当するかを確認する必要があります。

オンライン販売・仲介を組み込む場合には、金融商品仲介業と金融サービス仲介業を同一の登録類型として扱わず、取扱可能な商品、委託・所属関係及び行為範囲を区別して確認します。STという共通の表示だけで特定の仲介業登録が足りるとは判断できず、適合性、広告、説明態勢及び組織犯罪への対応も、実際の事業モデルに即して整備する必要があります。

電子記録移転権利は発行開示について第一項有価証券と同等に取り扱われるため、その取得勧誘が有価証券の募集に該当する場合には、発行開示が原則として問題となります。私募に該当するか、開示規制の適用除外があるか、有価証券届出書・目論見書その他の法定開示が必要かは、権利類型、勧誘対象、投資家属性、発行規模、譲渡制限等を踏まえて個別に判断します。

STOで注意すべきは、従来型の開示書類と技術資料が併存することです。発行体の財務・事業、裏付資産、配当・利払・償還、利益相反、手数料、優先劣後構造、譲渡制限、カストディ、ブロックチェーン、スマートコントラクト、秘密鍵、障害時の代替措置等について、法定開示書類、契約書、営業資料、ウェブサイト、FAQ及び技術仕様の内容が一致していなければなりません。

金融庁が強調しているのは、流通性が高まることによる情報の非対称性です。STだから開示が軽くなるのではなく、非上場資産に新たな流通性を付与するからこそ、発行者審査と情報提供の質が重要になるというのが制度の基本的な考え方です。

3 証券・技術のデューデリジェンスと法的な権利移転を統合する

金融庁の監督指針は、電子記録移転権利の引受け等を行う金融商品取引業者について、発行者の事業・財務状況だけでなく、取引に用いられるブロックチェーン等のネットワークその他の事項を審査し、営業部門から独立した審査態勢を整備することを求めています。これは、STOのDDが通常の証券発行DDに技術レビューを付け加えれば足りるという意味ではありません。

法務DDでは、発行体・SPC・信託・裏付資産・主要契約・訴訟・規制・利益相反・税務前提等を確認します。技術DDでは、トークン発行ロジック、権利数、移転制限、管理者権限、バーン・再発行、配当・償還ロジック、鍵管理、アップグレード権限、脆弱性、外部依存性等を確認します。最終的には、契約上の権利とコード上の挙動が一致するかを確認しなければなりません。法的には100口しか発行できないのに、コード上は無制限にmintできるという状態は、単なる技術上の不備ではなく、発行開示・投資家保護の重大な問題です。

日本STO協会も、電子記録移転権利の募集・引受け、取引、PTS、広告等について自主規制規則・ガイドラインを整備しています。登録業者がSTOへ関与する場合、法令と金融庁監督指針だけでなく、自主規制上の審査・販売・市場運営ルールまで組み込んだプロジェクト設計が必要です。

STOで最も重要でありながら見落とされやすい論点の一つが、ブロックチェーン上のトークン移転と、実体法上の権利移転の関係です。金融庁のガイドラインは、電子帳簿の書換えと権利の移転が一連として行われるかという観点から、電子記録移転権利該当性を判断する考え方を示しています。

しかし、実際の権利移転に必要な要件は元の権利によって異なります。社債、信託受益権、組合持分等では、契約成立、発行者・受託者の承諾、名簿・原簿等への記録、対抗要件その他の法的要件を別途確認する必要があります。『トークンがAウォレットからBウォレットへ移った』という事実のみで、あらゆる法的権利が第三者対抗力を備えて移転したと結論付けることはできません。

STOの設計では、注文成立、約定、決済、トークン移転、原簿更新、権利移転及び対抗要件具備がどの順序で発生するのかを文書化し、システム障害・誤送付・相続・差押え・破産・秘密鍵喪失等の例外時に、誰がどの根拠で訂正・凍結・再発行を行えるかまで定める必要があります。

4 販売・カストディ・システム管理を投資家保護の観点から組み立てる

STは、上場株式とは異なり、権利移転の仕組み、流動性、利用するネットワーク、ウォレット、秘密鍵、管理者権限、二次市場の有無等について固有のリスクがあります。金融庁は、顧客の投資経験や財産状況のみならず、STの保有・移転の仕組みや、それに起因するリスクへの理解度も取引開始基準へ反映することを求めています。

したがって、トークン化により1口を小口化し、スマートフォンから購入できるようになったからといって、投資家保護上のハードルが下がるわけではありません。むしろ、従来であればプロ投資家中心であった不動産・ファンド・非上場債権等へ一般投資家がアクセスしやすくなるほど、裏付資産の価格変動、流動性、償還、運用者、借入れ、利益相反、技術リスクを分かりやすく説明する必要性は高まります。

広告についても同様です。『いつでも売れる』『ブロックチェーンだから安全』『元本が安定している』など、技術又は市場構造から当然には導かれない表示は慎重でなければなりません。金融庁は、移転制限があるにもかかわらず自由に売買できるように見せる表示や、損失可能性を誤認させる表示等を監督上の問題として例示しています。

STの管理を顧客から受託する金融商品取引業者について、金融庁は秘密鍵管理、複数担当者による移転手続、マルチシグ等の措置、鍵の保管場所の分散、取引内容の真正確認、第三者委託先の管理等を具体的な監督項目として示しています。これは、秘密鍵管理が単なる情報セキュリティ対策ではなく、顧客資産保護・分別管理の一部として位置付けられていることを意味します。

特に、議決権その他の共益権を含むSTが流出した場合、金銭補償だけでは投資家の権利を完全に回復できない場合があります。また、決済に即時性を要しない商品で常時オンラインの秘密鍵管理を採用する合理性は限定的です。どの鍵を誰が保有し、何名の承認で移転できるか、障害時にどのバックアップが動くか、委託先が破綻・侵害された場合にどう復旧するかを契約と運用の双方で定める必要があります。

カストディを外部ベンダーへ委託しても、金融商品取引業者の責任が消えるわけではありません。委託先のセキュリティ、BCP、再委託、監査権、インシデント報告、損害賠償、サービス終了時の移行を含む委託先管理が不可欠です。

5 不動産STを証券・信託・不動産ファンドの複合案件として扱う

日本のSTO市場で重要なユースケースとなっているのが不動産STです。典型的には、信託受益権、SPCを利用したファンド持分その他の権利をデジタル化し、不動産から生じる賃料・売却益等を投資家へ分配します。ここではSTの規制だけでなく、信託、不動産、ファイナンス、アセットマネジメント、鑑定、税務・会計その他の専門領域が重なります。

さらに、トークン化された不動産特定共同事業契約上の権利については、2023年の法改正を経て金融商品取引法上の規制との接続が明確化されています。国土交通省は2026年8月21日、契約前説明事項、財産管理報告及び電子取引業務に関する情報提供等を強化する施行規則を公布・施行し、監督留意事項及び電子取引業務ガイドラインも改正・適用しました。一部規定には経過措置があるため、既存事業者や継続中の募集については、公布日だけで一律に判断せず、適用対象と対応時期を個別に確認する必要があります。

不動産をトークン化すれば規制が軽くなるわけではありません。むしろ一般投資家への販売、オンライン取引、二次流通を拡大するほど、裏付不動産の価値、賃料、テナント、借入れ、売却方針、利益相反、AM報酬等を証券販売のレベルで説明・管理する必要があります。

6 二次市場の規制と流動性の限界を発行時から織り込む

STOの経済的価値を高めるためには、発行後に投資家が売却できる二次流通の整備が重要です。もっとも、流通性を付与することは投資家保護上の負担も高めます。市場の運営、参加業者、価格形成、注文方法、適合性、取引監視、開示更新、決済、カストディ、システム接続等を一体として設計しなければなりません。

大阪デジタルエクスチェンジのPTS「START」は2023年12月にSTの二次流通市場として開始され、2026年3月25日にはSBIホールディングス株式会社が発行する100億円の個人投資家向けST社債について売買を開始しました。これは、本邦におけるST社債の二次流通が実際の市場フェーズへ入ったことを示す重要な事例です。

PTSを自ら運営する場合には、第一種金融商品取引業に加え、金商法第30条に基づくPTS業務の認可又は、一定の流動性の低い有価証券のみを取り扱い売買高基準以下である場合の登録PTS制度が問題となります。単にウェブ上で買い手と売り手をマッチングするサービスを提供するだけでも、その取引構造によっては市場開設規制の検討が必要になります。

PTSが存在することと、個々の銘柄に十分な流動性が存在することは別問題です。STは非上場資産を裏付けとする商品が多く、買い手の厚み、価格情報、売買頻度、最低取引単位等によっては、投資家が希望する時点・価格で売却できない可能性があります。

発行体・販売会社が二次流通を訴求する場合には、取引可能時間、参加証券会社、売買方法、流動性、価格変動、取扱停止・上場廃止に相当する事象等を正確に説明しなければなりません。二次流通の存在を、元本保証や流動性保証と誤認させる表現は避けるべきです。

7 クロスボーダー販売から償還までのライフサイクルを接続する

ブロックチェーン上のトークンは技術的には国境を越えて移転できます。しかし、日本で有価証券を勧誘・販売する場合、日本の金融商品取引法上の募集・私募、金融商品取引業、開示、外国発行者に関する規制等が問題となります。海外でsecurity tokenとして適法に発行されていることだけで、日本の投資家への販売が自由になるわけではありません。

逆に、日本のSTを海外投資家へ販売する場合も、販売先法域の証券規制、私募要件、投資家資格、制裁・AML、税務、データ保護等を確認する必要があります。スマートコントラクトによるホワイトリストやtransfer restrictionは、各法域の販売規制を実装する有力な手段となりますが、コード上の制限が法的義務を自動的に満たすわけではありません。

クロスボーダーSTOでは、グローバルな投資家台帳と日本の権利記録、海外カストディアンと日本の金融商品取引業者、複数チェーン間の移転等をどのように接続するかが実務上の重要論点となります。

STOで失敗しやすいのは、発行日までのスケジュールだけを中心に組成し、発行後の運用を後から考えるケースです。STには、利払・分配、投資家情報更新、適格性確認、譲渡、相続、差押え、秘密鍵紛失、二次売買、システム障害、償還、トークン焼却、ファンド清算等のイベントが継続的に発生します。

したがって、プロジェクト開始時点で、権利の全ライフサイクルを図示し、各イベントについて「誰が法的に権限を持ち、誰がシステムを操作し、どの記録が最終的な権利記録となり、障害時にどう復旧するか」を定めておくことが重要です。STOは証券発行プロジェクトであると同時に、長期にわたる金融オペレーションの設計です。

STOの法務に求められるのは、単に『第一種か第二種か』『届出が必要か』という論点回答ではありません。発行体が意図するキャッシュフローと権利内容を契約として成立させ、投資家に正確に説明し、システムがその権利を再現し、販売会社が適切に審査・勧誘し、カストディが安全に機能し、二次市場が想定どおりに権利を移転できる状態を作ることが本質です。

SAKURA法律事務所及び代表弁護士 道下剣志郎は、セキュリティトークン、電子記録移転権利、トークン化不動産、金融商品取引業、投資運用、PTS、暗号資産・ステーブルコインその他のデジタル金融案件について、規制分析だけでなく、発行スキーム、契約、開示、発行者DD、システム・カストディ、二次流通及びクロスボーダー対応を含む総合的な法務支援を行います。

FAQ

Q1 セキュリティトークンと暗号資産は何が違いますか。

セキュリティトークンは、有価証券又は有価証券性を有する権利を電子的に表章するものであり、金融商品取引法上の有価証券規制が中心です。暗号資産は別の法的類型です。ブロックチェーンを使うという技術的共通性だけで、同じ規制になるわけではありません。

Q2 信託受益権をトークン化すると必ず第一種金融商品取引業が必要ですか。

トークン化された信託受益権が電子記録移転権利に該当し、その売買・媒介等を業として行う場合は第一種金融商品取引業が中心的な論点となります。他方、定義府令所定の要件を満たす適用除外電子記録移転権利として第二項有価証券にとどまる場合は、第二種金融商品取引業の枠組みとなる余地があります。

Q3 STOなら有価証券届出書は不要ですか。

いいえ。電子記録移転権利は、発行開示について原則として第一項有価証券と同等の規律を受けます。公募・私募の別、発行規模、勧誘対象その他の要件に応じて、発行開示の要否を検討する必要があります。STOという名称自体は開示規制の例外を生みません。

Q4 ブロックチェーン上でトークンが移転すれば、法律上も権利移転は完了しますか。

必ずしもそうではありません。元となる権利に応じて、契約、承諾、名簿・原簿への記録、対抗要件等を確認する必要があります。STOではオンチェーンの記録と実体法上の権利移転を一致させる設計が不可欠です。

Q5 不動産STは不動産を直接トークン化するのですか。

多くのスキームでは、不動産そのものではなく、信託受益権やファンド持分等をトークン化します。その場合、不動産、信託、ファンド、金融商品取引法の各規制を重ねて検討します。

Q6 STを販売する証券会社は技術面まで審査する必要がありますか。

金融庁の監督指針は、発行者の事業・財務だけでなく、STに用いられるブロックチェーン等のネットワークその他の事項について審査態勢を整備することを求めています。法務・財務DDと技術DDを分断せずに行うことが重要です。

Q7 秘密鍵を外部カストディ業者へ預ければ、証券会社側の責任はなくなりますか。

なくなりません。金融商品取引業者には、委託先が自己管理と同等の顧客保護を確保しているかを確認し、委託先管理を行うことが求められます。

Q8 STはSTARTのようなPTSで売買できますか。

銘柄や参加業者等の条件を満たせば可能です。2026年3月にはSTARTで本邦初の個人投資家向けST社債の二次売買が開始されました。ただし、PTSがあることは個々の銘柄の流動性を保証するものではありません。

Q9 海外発行のsecurity tokenを日本の投資家へ販売できますか。

日本の金融商品取引法上の有価証券分類、募集・私募、金融商品取引業登録、開示等を確認する必要があります。海外で適法に発行されていることだけでは、日本での販売が自由になるわけではありません。

Q10 STOを始める際に最初に決めるべきことは何ですか。

最初に、何の権利を誰が発行し、誰に販売し、誰が販売・運用・保管を担い、発行後に二次流通させるのかを確定します。その後に、有価証券区分、ライセンス、開示、契約、権利移転、システム、カストディ及び二次市場を一体として設計するのが実務的です。

代表弁護士 道下剣志郎「Legal Update」について

SAKURA法律事務所は、代表弁護士 道下剣志郎のプロフィールページを通じ、企業法務、M&A、Cross-Border、国際紛争、金融規制、Web3・Crypto、AI・IT、データ保護、知的財産、危機管理及び社内調査等に関するLegal Updateを継続的に公表しています。第27回では2026年の改正暗号資産規制を取り上げましたが、第28回では、暗号資産とは異なる「有価証券としてのデジタル資産」に焦点を移し、セキュリティトークンの発行・販売・管理・二次流通を実務の流れに沿って整理しています。

SAKURA法律事務所 公式サイト https://sakura-lawyers.jp/

代表弁護士 道下剣志郎 プロフィール https://sakura-lawyers.jp/lawyer/michishita-kenshiro/

SAKURA法律事務所に相談できる事項

SAKURA法律事務所では、セキュリティトークン、STO、電子記録移転権利、トークン化株式・社債、トークン化不動産、信託受益権・ファンド持分、第一種・第二種金融商品取引業、投資運用業、PTS、暗号資産、ステーブルコインその他のデジタル金融案件について相談を受け付けています。発行体、証券会社、金融機関、アセットマネージャー、不動産事業者、FinTech・Web3企業及び海外事業者に対し、法的分類、スキーム設計、ライセンス、契約、開示、発行者審査、システム・カストディ、金融庁・財務局対応及びクロスボーダー案件まで一体的に助言します。

お問い合わせ

セキュリティトークン、STO、電子記録移転権利その他のデジタル証券・金融規制に関するご相談は、SAKURA法律事務所までお問い合わせください。

SAKURA法律事務所
〒106-0032 東京都港区六本木一丁目4番5号 アークヒルズサウスタワー4F
代表弁護士 道下 剣志郎

Web: https://sakura-lawyers.jp/

主な参考資料

1 金融商品取引法(e-Gov法令検索)

2 金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(e-Gov法令検索)

3 金融庁「金融商品取引法等に関する留意事項について(金融商品取引法等ガイドライン)」

4 金融庁「投資運用業等 登録手続ガイドブック(参考1)」―電子記録移転権利等の定義

5 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針 IV-3-7」―電子記録移転有価証券表示権利等

6 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針 V-2-5」―適用除外電子記録移転権利等

7 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針 IV-4-2-1」―PTS業務の認可及び登録

8 日本STO協会「セキュリティトークンに関する現状等について」(2023年6月6日)―金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」提出資料2

9 日本STO協会「定款・自主規制規則等・諸規則」

10 日本STO協会「広告等に関するガイドライン」等

11 日本STO協会「私設取引システムにおける電子記録移転権利の取引等に関する規則」

12 日本証券業協会「電子記録移転有価証券表示権利等の取扱状況等について」

13 大阪デジタルエクスチェンジ「START」

14 大阪デジタルエクスチェンジ「初の個人投資家向けST社債のSTART市場での売買取引開始」(2026年3月25日)

15 国土交通省「不動産特定共同事業等について」―公式ガイダンス・関連資料

16 国土交通省「不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令」の公布等(2026年8月21日)

17 金融庁・国土交通省「トークン化された不動産特定共同事業契約に基づく権利に係る情報提供資料」

18 SAKURA法律事務所 公式サイト

19 SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下剣志郎 プロフィール

20 金融庁「FinTech Support Desk」FAQ Q7-2(電子記録移転権利の自己募集・私募)

免責事項

本稿は、2026年10月1日時点で公表されている日本法令、金融庁・国土交通省その他の公的資料、日本STO協会その他の自主規制資料及び一般的な実務を基礎として、セキュリティトークン、STO、電子記録移転権利その他のデジタル証券規制に関する一般的な情報を提供するものであり、特定の発行、募集、私募、販売、投資運用、カストディ、PTS取引その他の案件についての法的助言又は法律意見を構成するものではありません。セキュリティトークンへの該当性、第一項・第二項有価証券の区分、電子記録移転権利又は適用除外電子記録移転権利の該当性、金融商品取引業登録、開示、販売・勧誘、分別管理、権利移転、AML/CFT、不動産特定共同事業法その他の適用関係は、表章される権利、トークン設計、投資家、販売方法、流通設計、関係当事者その他の具体的事情により異なります。個別案件については、その時点で施行されている法令、内閣府令、監督指針、自主規制規則その他の最新資料を確認の上、適切な専門家へ相談する必要があります。

NextPrev