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2026.10.29

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【SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下剣志郎 Legal Update】企業広告・デジタルマーケティングの景品表示法実務――No.1表示、ステルスマーケティング、二重価格、確約手続・課徴金と企業統治【2026年版】について公開いたしました。

SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下剣志郎 Legal Update

2026年10月22日現在 | 初稿の調査基準日:2026年10月9日/追加一次資料確認:2026年10月22日

SAKURA法律事務所 代表弁護士 道下 剣志郎

企業にとって広告とは、商品の特徴を伝えるための表現活動であると同時に、取引条件を形成し、顧客の期待を設定し、事業の成長を支える経営上の行為である。現在、その広告は自社ウェブサイトやテレビCMにとどまらず、検索連動型広告、SNS、動画配信、比較サイト、アフィリエイト、インフルエンサーの投稿、レビューの二次利用、価格を自動的に変更するECサイトなど、企業の管理が及びにくい複数の経路を通じて消費者に届けられる。広告制作を外注したという事実によって、供給事業者が負う表示の適正性に関する責任が当然に消えるわけではない。

景品表示法の実務では、事業者が事実と異なる広告を意図して制作したかという主観だけを問うのでは足りない。一般消費者が表示全体からどのような品質、効果、価格又は取引条件を理解するか、その理解を支える客観的事実と合理的資料が存在するかが問題となる。例えば、調査会社が作成した「顧客満足度No.1」という報告書の存在、広告主がインフルエンサーに金銭を支払っていないという説明、通常価格を販売管理システムに登録していたという記録は、いずれもそれだけで表示の適法性を確定しない。調査方法と訴求内容、投稿に対する関与、過去の実際の販売状況を、それぞれ広告を受け取る消費者の認識に照らして検討する必要がある。

制度も、表示の修正だけで問題を終わらせるものではなくなっている。2023年改正景品表示法の主要規定は2024年10月1日に施行され、確約手続の導入、課徴金制度の見直し、優良誤認表示及び有利誤認表示に関する直罰規定などが整備された。さらに消費者庁が2026年5月に公表した2025年度の運用状況では、措置命令13件、確約計画認定8件、課徴金納付命令10件が報告された。2026年6月及び8月には、インフルエンサー投稿等に関係するステルスマーケティング告示違反について個別の措置命令も公表されている。もっとも、措置命令、確約計画の認定、行政指導及び課徴金納付命令は、法的性質と前提となる認定が異なるため、これらを同一の「違反認定」として説明することはできない。 なお、2026年10月20日には、消費者庁が株式会社giobaiの広告表示について、優良誤認表示又はステルスマーケティング告示違反に該当するとして措置命令を公表している。複数の規制類型が同一事業者の広告運用で交錯し得ることを示す事例であり、確約認定とは法的性質が異なる。

本稿では、景品表示法が保護する消費者の選択と広告主体の認定を起点に、優良誤認・No.1表示の裏付け、価格・キャンペーン表示の適正性、ステルスマーケティングと第三者投稿、広告代理店・アフィリエイト・景品企画の管理を検討する。その上で、2024年改正後の行政処分、確約手続、課徴金及び刑事罰の関係を整理し、法務・マーケティング・会計・経営企画・取締役会がどのような資料と承認手続を整えれば、成長施策と適法性を両立できるかを論じる。個々の表示文言を事後的に添削するのではなく、広告の企画から販売、是正、事業買収に至るまでの一連の意思決定を法的に設計することが、本稿の視点である。

本稿の要旨

景品表示法が規制するのは、一般消費者による自主的かつ合理的な商品・サービスの選択を妨げる不当な表示及び一定の景品類の提供である。商品の品質・性能等を実際より著しく優良であるかのように示す優良誤認表示、価格その他の取引条件を実際より著しく有利であるかのように示す有利誤認表示、内閣総理大臣が指定する一定の不当表示は、それぞれ根拠と適用範囲を区別して判断する。景品表示法上の「表示」は、紙面やウェブ広告の本文に限定されず、画像、注記、比較表、商品紹介動画、投稿等によって消費者に与えられる全体的な印象を捉える。誰が表示を決定し、自己の供給する商品・役務の販売に利用したかも重要である。

No.1表示は、第三者調査会社による証明書の取得で完成するものではない。消費者庁の2024年9月公表の実態調査報告書が示すとおり、比較対象商品の選定、回答者の属性・利用経験、質問内容及び調査結果と広告文言の対応を吟味しなければならない。効果・性能に関する優良誤認表示が疑われる場合には、景品表示法第7条第2項及び第8条第3項に基づき合理的根拠資料の提出を求められることがあり、資料の不提出又は不十分な提出は、措置命令との関係では不当表示のみなし、課徴金との関係では推定という異なる効果を生じさせる。公表済みの広告の内容に合わせて後から試験を実施すれば足りるという理解は危険である。

2023年10月1日施行のステルスマーケティング告示では、事業者の表示であるにもかかわらず、一般消費者がその事業者の表示と判別することが困難なものを規制する。広告主が内容の決定に関与した投稿を、個人の独立した推奨であるかのように見せることが問題の中心であり、金銭の支払の有無だけで機械的に決まるものではない。告示違反のみを理由として課徴金が課されるわけではないが、優良誤認又は有利誤認の要件を併せて満たす場合は別に検討を要する。広告代理店、販売パートナー、インフルエンサー等との契約や運用手続では、表示の作成・承認・保存・訂正に関する権限と責任を明確にする必要がある。

2024年10月施行の改正後は、確約計画の認定によって一定の法的措置を回避し得る仕組みがある一方、課徴金額の推計、過去の課徴金命令を踏まえた加算、優良誤認・有利誤認についての直罰規定が整えられた。確約認定は違反認定ではなく、企業の任意の改善申出だけで当然に利用できる手続でもない。取締役会と法務責任者には、キャンペーン開始前の根拠審査、実際の販売価格と広告履歴の保存、委託先の監督、不備発覚時の証拠保全と是正、M&Aにおける過去の広告リスクの評価を、継続的な内部統制として連動させることが求められる。

第1章 広告・表示規制の出発点――一般消費者の認識と責任主体の確定

景品表示法の制度目的は、企業間の広告競争を一律に抑制することではなく、一般消費者が商品・サービスを自主的かつ合理的に選ぶための判断基盤を守ることにある。景品表示法第5条は、商品・役務の内容に関する優良誤認表示、価格その他の取引条件に関する有利誤認表示及び同条第3号に基づき指定された表示を禁止する。広告の適法性を検討する際の出発点は、広告主がどのような意味で表示したかったかという内部の意図ではなく、通常の一般消費者がその表示から何を理解するかである。誇張的な表現がすべて禁止されるのではないが、その程度が社会一般に許容される範囲を超え、商品選択に影響するほどの優良性又は有利性を示す場合は、景品表示法上の評価が必要となる。

この判断は、特定の一文だけを抽出する作業ではない。訴求の中心に大きく置かれた効果表示、写真、動画の演出、販売ページの配置、価格の打消し表示、スマートフォンで画面をスクロールした後に初めて現れる条件などを含む、表示全体の印象が問われる。例えば、広告の上部で無条件の返金を強調し、契約上の重要な例外を長い利用規約に埋め込んだ場合、利用規約に例外を記載したことだけで最初の誤認が解消するとは限らない。法務レビューでは、校了前の原稿だけではなく、消費者が接する端末・広告面・遷移先・申込画面まで含めた実際の体験を確認する必要がある。

また、規制対象となる表示は、企業が自社の広告部門で制作したものに限られない。景品表示法上、自己の供給する商品・役務について行われる広告その他の表示であるか、表示内容の決定にその事業者がどのように関与したかが重要となる。広告代理店がコピーを制作し、アフィリエイターが配信し、インフルエンサーが個人アカウントで紹介した場合でも、商品を供給する広告主側の責任は、契約書に「広告掲載に関する法令遵守は受託者の責任とする」と記載するだけでは当然に消滅しない。他方、プラットフォームを運営しているという一事をもって、掲載されたあらゆる第三者の表示について当然に景品表示法上の表示主体になるわけでもない。表示の作成、指示、選定、修正、利用及び商品供給の実態を個別に確かめるべきである。

広告をめぐる法律関係は、行政規制と契約上の義務を分けて把握する必要がある。広告制作会社との契約に検収条項や損害賠償条項を置くことは、費用負担と内部的な責任分配には意味を持つ。しかし、それは消費者庁に対する表示の適法性を直接保証するものではない。同様に、ブランドを共同販売する企業、フランチャイズ本部と加盟店、製造元と販売元の間では、商品内容の情報提供、最終的な広告決定、価格設定、表示修正の権限が分かれるため、それぞれの当事者が実際に何を供給し、何を決定しているかによって法的整理を行う必要がある。無理にすべての当事者を一律の広告主とみなすことは、責任の所在をかえって不明確にする。

適用される法律も一つとは限らない。健康食品や医療・美容関連の広告には、具体的な商品・表現に応じて薬機法、健康増進法、医療広告規制等が重なることがあり、定期購入や通信販売の申込画面には特定商取引法上の表示義務が問題となる。金融商品・暗号資産その他の規制事業では、個別業法による広告規制と景品表示法上の問題を同時に検討しなければならない。景品表示法が主として一般消費者向けの表示を対象とすることにも留意すべきであり、事業者間取引の資料すべてに同法を機械的に適用するのではなく、実際の情報の到達先と取引の性質を踏まえて整理する。

したがって、広告のリーガルチェックを、表現が完成した後の一度限りの承認にしてはならない。企画時には何を客観的事実として訴求するのかを定め、制作時には根拠資料と表示の対応を確認し、配信時には媒体ごとの見え方を検証し、掲載後には販売条件や商品の仕様変更が従前の説明を不正確にしていないかを監視する。規制対応を営業・マーケティングに対する事後的な制約ではなく、顧客に約束する内容を会社自身が正しく把握するための経営管理と位置付けることが重要である。

第2章 優良誤認表示とNo.1表示――広告の裏付けを事前に確保する

品質、規格、効能、性能及びサービスの水準に関する広告では、景品表示法第5条第1号の優良誤認表示が中心となる。「利用するだけで必ず改善する」「業界最高水準」「専門家が認める」「顧客満足度No.1」などの文言は、文字どおりの意味のほか、広告全体の文脈によって具体的な効果や比較上の優位性を示す場合がある。その真偽を判断する際には、事業者がどの資料を保有していたかのみならず、資料が検証した条件と消費者に伝えた効果・優位性の範囲が一致するかが問われる。特定条件下の試験結果を、通常利用のすべての場面における性能保証のように転用することは慎重でなければならない。

合理的根拠資料の問題は、行政調査の段階で特に厳しい形をとる。同法第7条第2項は、優良誤認表示該当性を判断するため必要があると認めるとき、期限を定めて合理的根拠資料の提出を求める仕組みを置く。期限内に提出しない場合、又は提出資料が合理的根拠と認められない場合には、措置命令との関係で優良誤認表示とみなされる。同法第8条第3項の課徴金納付命令に関する規定では、同様の場面について推定という異なる効果が定められている。消費者庁の表示に関するQ&A及び不実証広告規制の運用指針は、通常、資料提出を求める文書の交付から15日という短い期間と、客観的な実証資料及び表示との適切な対応の重要性を示している。広告が公開された後に新たな試験計画を立てる運用では、この時間的制約に対応し難い。

2024年9月26日に公表された消費者庁のNo.1表示に関する実態調査報告書は、この点を企業の広告実務に引き寄せて示した。例えば、主観的な「顧客満足度No.1」という表現が、実際の利用経験に基づく比較であるように受け取られる場合、利用経験のない回答者に広告画面だけを見せたイメージ調査を根拠にすることは適切とはいえない。また、比較すべき主要な競合サービスを対象から外した調査、恣意的に選定された自社顧客のみを対象とする調査、質問文によって回答を誘導する調査にも問題が生じ得る。調査会社が外部の第三者であっても、その独立性と調査設計の合理性は別の問題である。

ここで注意すべきことは、No.1表示の判断が定型的な証明書の有無で完結しないことである。市場の範囲、商品カテゴリー、比較した競合商品、母集団、回答者の属性、実施日、対象者が実際に何を評価したか、集計方法、同率順位の処理、調査期間から表示時点までの市場変化を確認する必要がある。例えば、一部の地域の一部のサービスを比較して得た第1位を、全国の同種サービス全体でNo.1であるかのように用いることは、比較の射程を超える。広告主が必要とするのは調査会社のロゴではなく、自社の広告文言が調査報告書のどの設問と数値によって裏付けられるかを説明できる検証記録である。

体験談や専門家推奨表示も、これと同じ証拠の問題を含む。実際の利用者が語った個別の経験が真実であっても、それを一般消費者が通常期待できる結果のように示す場合には、実際の平均的な効果との関係を検討しなければならない。医師、薬剤師、研究者その他の専門家による推奨を表示するのであれば、推奨者の実在、専門領域、評価した資料、調査の実施方法と利害関係を確認する。専門家の名称の借用や、評価対象と異なる製品への推薦文の流用は、契約上の問題にとどまらず表示全体を不正確にする。商品の効果・性能については、規制上必要とされる根拠の水準に加えて、広告対象者の理解を歪めない編集が必要となる。

生成AIによって広告文案、比較記事、レビュー風の文章を大量に生成する場合にも、判断の基準は変わらない。AIが生成した文言というだけで直ちに違法であるわけではないが、架空の調査結果、存在しない利用者の体験、実施していない試験結果を実在のものとして流通させれば、内容に応じた表示上の問題を生じさせる。広告の自動生成、A/Bテスト、キーワード別のランディングページ展開を行う企業では、個々の表現が事前に承認した客観的根拠の範囲を超えない仕組みを設けるべきである。根拠資料は商品開発部門が保管し、広告の文言は外注先だけが管理するという状態を改め、主張内容、出典、広告素材、掲載期間及び承認者を追跡できる体制が求められる。

これらの措置は、行政調査のためだけの書類作成ではない。試験や調査の限界を正しく理解すれば、企業は、訴求を弱めるという選択だけでなく、検証可能な範囲で特徴を明確に説明するという選択ができる。長期的に維持できるブランドの価値は、短期間の売上を増やすために証明不能な「最高」「唯一」「必ず」を積み上げることではなく、裏付けのある差別化要素を正確に伝えることから生まれる。

第3章 有利誤認表示と価格・キャンペーン設計――販売システムと広告の整合性

価格に関する広告では、景品表示法第5条第2号の有利誤認表示が問題となる。消費者は値引率、通常価格、期間限定の割引、無料体験、ポイント還元、解約条件などを相互に比較して取引を選択するため、そのいずれかについて実際の条件より著しく有利であるという印象を与えれば、誤認の危険が生じる。商品・サービスの品質に問題がなくとも、価格や申込みの条件に不正確な表示があれば同法の適用が排除されるわけではない。広告部門と料金・契約・システム部門が異なる情報を管理していることが、実務上の主要なリスクである。

二重価格表示では、比較対照価格の性質と実績が重要となる。消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」は、過去の販売価格を用いる場合に、同一商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格であるかを重視する。単に社内の商品マスターに「通常価格」を登録したことや、短期間だけ高額で掲載したことによって、長期間の通常販売価格が存在したことになるわけではない。過去の販売価格、メーカー希望小売価格、他店価格、将来予定価格は性質が異なる。どの価格と比較しているかを消費者に明確にし、その比較が適切であることを販売履歴、期間、対象商品及び販売条件から確認する必要がある。

割引の期間を限定する広告にも固有の問題がある。「本日限り」「今だけ半額」と示しながら、翌日も同等の条件が継続する、キャンペーンのカウントダウン表示がアクセスごとにリセットされる、期限経過後にも一般的に同じ価格で契約できるなどの場合、消費者が認識した取引機会の希少性と実態が一致しない可能性がある。2026年3月に公表されたエステティックサロンに関する確約計画認定事例も、期限付きクーポンによる価格訴求が問題とされた事案として参考になる。ただし、この事例における確約認定を、当局が当該表示について違反を確定した措置命令であるかのように引用することは正確ではない。

サブスクリプション契約や継続課金サービスでは、初回料金だけでなく、次回以降の料金、最低利用期間、解約の受付時期、追加料金、対象プラン、返金条件が消費者の判断を左右する。「実質無料」と表示する際に、還元条件、ポイントの使用期限、別途必要な手数料を十分に説明しなければ、広告の中心的な印象と契約の経済的負担が乖離し得る。特定商取引法に基づく最終確認画面の表示等は別個に検討すべきであり、同法上の形式的な表示を整えたからといって、集客広告全体について有利誤認が生じないとは限らない。広告を見てから支払・解約に至るまでの流れを一つの取引として検証することが必要である。

近年のデジタル広告では、利用者属性、訪問履歴、地域、在庫、広告配信経路に応じて価格や特典が変動する。価格差を設けること自体が景品表示法上直ちに禁止されるものではないが、広告に記載された価格を誰がどの条件で利用できるのかが不明確であれば、実際の取引条件との不一致が問題となる。A/Bテストや広告ネットワークの自動最適化を行う場合、表示時点のスクリーンショット、配信対象、ランディングページの版、キャンペーンの発動条件及びバックエンドの価格履歴を保存することに意味がある。広告が自動的に切り替わるという理由で企業が後から表示内容を再現できないのであれば、是正判断や行政対応に必要な資料が不足することになる。

実際の法執行では、最終的な表示の意味が、商品購入だけでなく買取サービス等の取引条件でも問題となり得る。消費者庁は2026年6月11日、スマートフォン及びタブレットの買取サービスに関する表示について、有利誤認表示を理由に事業者へ措置命令を行った。ここから導かれる実務上の教訓は、値引きキャンペーンに限らず、買取条件、還元、手数料、無料提供、契約更新時の優待など、消費者に有利な取引であるという訴求のすべてについて、実際の条件との対応を検証すべきことにある。他方、個別の処分内容を確認せずに、同種サービスのすべてのキャンペーンが違法であるかのように一般化すべきではない。

企業が採用すべき管理は、法務が広告原稿に丸印を付けることで完結しない。価格表示の承認時に参照した販売価格の履歴と、システムに実装した条件を紐付け、変更時には営業・経理・システム部門から法務又は広告管理責任者へ通知する。広告に表示する比較価格、割引額、適用条件、終了日時、解除・返金条件が一致していることを、開始前だけでなく実施中と終了時にも検証する。この運用があって初めて、価格戦略の機動性と顧客への説明の確実性を両立できる。

第4章 ステルスマーケティングとレビュー――第三者の声が広告主の表示となるとき

2023年10月1日から適用されているステルスマーケティング告示は、景品表示法第5条第3号に基づく不当表示の指定である。問題となるのは、事業者の表示でありながら、一般消費者がその事業者の表示であると判別することが困難な場合である。独立した第三者の評価と、販売事業者の依頼又は関与による広告とは、消費者がその情報に与える信頼の意味が異なる。広告であることを隠す手法は、個々の商品の品質や価格の誇張が立証されない場合でも、消費者の選択を歪め得るという点に、この告示の独自性がある。

もっとも、ある投稿に商品名が登場した、投稿者が企業から商品を受け取った、企業と投稿者に過去の取引関係があるという事実だけで、全てが機械的に違反となるわけではない。告示と消費者庁の運用基準は、表示内容の決定に事業者が関与したか、投稿の目的や経緯に照らして事業者の表示と認められるかを、具体的事情に即して判断する枠組みを示している。報酬、商品提供、投稿の条件、文案の指示、投稿前の確認、否定的な評価の削除要請、継続的な関係等は検討要素になり得る。他方、企業から独立した利用者の自発的な感想まで、事業者の表示として一律に規制するものではない。

広告主の表示に該当する場合には、一般消費者が広告であることを明瞭に認識できることが必要である。「広告」「PR」などの表現を使用する場合も、それを小さく不明瞭な文字で隠したり、大量のハッシュタグの末尾に埋め込んだり、画像・動画の内容と離れた位置に表示したりすれば、実際の画面で判別が難しくなる可能性がある。どの一語を記載すれば常に適法という形式的な安全地帯があるわけではない。短尺動画の再生画面、閲覧端末、文字の視認性、投稿の一部だけが外部の検索結果に表示される場合なども考慮し、広告としての性格を消費者が理解できる表示方法を採用することが実務上重要となる。

レビューの二次利用にも注意が必要である。もともと独立した利用者が投稿した感想であっても、企業がその一部だけを選んで自社の販売サイトへ掲載し、見出しを付け、広告の一部として利用する場合には、その編集・掲載の態様を検討しなければならない。レビューの原文が存在するということと、企業が再構成した広告が真実であるということは異なる。投稿者の同意や著作権処理を得ていたとしても、それによって景品表示法上の誤認の問題が当然に解消するものではない。都合の悪い条件を省略した抜粋、架空の利用者を用いた体験談、限定的な結果の一般化などは、それぞれ表示の内容に即した検討を要する。

公表済みの事例は、これらの判断を実務に引き寄せる素材となる。消費者庁は2025年9月、冷凍宅配食に関するSNS投稿等をめぐる違反被疑行為について、関係事業者の確約計画を認定した。この公表は、事業者の投稿依頼と販売サイトへの利用が法的検討の対象となり得ることを示すが、当局が法違反を認定した処分ではない。他方、2026年6月29日には食品の表示に関して、同年8月6日にはアプリサービスに関して、消費者庁がステルスマーケティング告示違反を認定して措置命令を公表した。確約認定と措置命令を区別しながら、事業類型を問わず広告主と第三者投稿の関係が監督対象となっていることを読み取るべきである。

さらに2026年10月20日、消費者庁は株式会社giobaiが供給する「FLEURISTE」等の表示について、優良誤認表示又はステルスマーケティング告示に該当する行為が認められたとして景品表示法7条1項に基づく措置命令を公表した。これは、実証を要する品質・性能の訴求と、第三者の投稿が事業者の表示であることの識別という二つの問題を、別々の条文に沿って検討する必要を示す。個別事実の認定を離れて、同業のすべての広告やインフルエンサー施策が違法だと一般化してはならない。

法的な責任分担の点では、ステルスマーケティング告示による景品表示法上の直接の規制対象は、商品・サービスを供給する事業者であり、独立したインフルエンサー本人が広告主と同じ主体として告示の名宛人になる制度ではない。ただし、投稿者に別法令上又は契約上の責任が生じないことを意味しない。また、ステルスマーケティング告示違反のみでは景品表示法上の課徴金納付命令の対象とはならないが、当該投稿が商品の品質又は価格に関して優良誤認・有利誤認表示の要件を満たす場合には、それらについて独立した検討が必要である。広告であることの開示と、広告の内容が正確であることは、異なる義務なのである。

企業は、インフルエンサー契約の締結時に、投稿の依頼目的、表示内容に対する指示と承認、広告表示の方法、提供商品の条件、修正・削除及び証拠保存の対応を明らかにすべきである。配信先が複数のSNSに及ぶ場合は、媒体ごとの開示方法を確認する必要がある。投稿後に実態が変わったときの修正、投稿者が契約外の表現を追加した場合の連絡、問題のある口コミを販売サイトへ転載しないための審査等を含め、契約条項と現場の運用を一致させることが重要である。広告主が必要とするのはインフルエンサーに一律の免責をさせる文言ではなく、問題を発見し、速やかに表示を是正できる具体的な支配と監督の仕組みである。

第5章 アフィリエイト、広告委託及び景品企画――外部化した販売活動をどう統制するか

広告の委託先が増えるほど、企業は自らの広告の実体を把握しにくくなる。アフィリエイト広告では、広告主、アフィリエイトサービス事業者、制作会社、配信媒体、紹介者の間に複数の契約関係が形成され、報酬が獲得件数や成約件数に連動する場合も多い。成果報酬それ自体が景品表示法上禁止されているわけではないが、短期間の獲得実績を重視する設計では、広告主が認めていない強い効果表現、虚偽の限定販売、体験談風の表示等が誘発される危険がある。委託先の契約に法令遵守条項を設けるだけでなく、どのサイトにどの広告が掲載されるか、誰が広告文言を変更できるか、何を根拠に成約を認定するかを把握する仕組みが必要となる。

広告主と代理店の契約では、承認対象を広告の初稿だけに限定してはならない。検索キーワードに連動した見出し、見込み顧客の属性に応じた表示、ランディングページの差替え、価格・特典の変更、口コミの引用、第三者サイトへの転載など、実際に消費者に示される表現が承認範囲を逸脱する経路を洗い出す必要がある。広告主に素材の確認権限を残すと同時に、代理店には掲載先と広告の版を記録し、不当表示の疑義が生じた場合に速やかに配信を停止して証拠を保存する義務を負わせる。再委託を認める場合には、同等の管理基準を下位の委託先にも及ぼし、監査・報告・是正に必要な情報が広告主へ還流するようにする。

社内の費用負担の設計も重要である。代理店に全ての行政制裁を転嫁するという条項があっても、行政当局に対する表示主体の責任をその条項によって排除できない。また、支払停止や即時解除を広範に認める条項は迅速な危機対応には有益であるが、軽微な表示変更と重大な不正行為を区別しないまま行使すれば、別の契約紛争を生じさせる。実務では、違反疑義の通知と調査協力、問題広告の緊急停止、是正の期限、消費者対応費用の負担、必要な資料の保存、監査権限、反復違反時の解除という手続を、実際の業務フローに合わせて規定することが望ましい。

景品表示法は広告文言だけでなく景品類の提供も規制する。一般消費者の誘引のため、取引に付随して経済上の利益を提供する場合には、景品類該当性、一般懸賞・共同懸賞・総付景品の別、適用される価額制限等を検討しなければならない。現金値引き、通常の取引条件としてのポイント提供、取引から独立したオープン懸賞などは、法律上の位置付けが同じではない。SNS投稿を条件とする抽選、商品購入者向けの豪華景品、紹介プログラムにおける謝礼は、企画の名称よりも取引との結び付き、受益者、経済上の利益の性質と実施条件を踏まえて整理する必要がある。本稿の中心は表示規制であるが、販売促進企画を実施する企業が景品規制の別途審査を省略してよいということではない。

企業グループやフランチャイズの広告も、外部委託と類似した問題を持つ。本部がテンプレートを配布しても店舗ごとの価格やサービス条件が異なれば、統一広告が各店舗の実態に合致するか確認しなければならない。逆に、加盟店が独自のキャンペーンを実施する際、本部の商標や共通予約システムを利用していることだけで本部の景品表示法上の責任が常に自動的に確定するわけではない。契約上の表示決定権限と、現実の広告制作・承認・商品供給の関係に着目して判断する。合併、販売会社の変更、ブランドの譲渡がある場合にも、過去の表示、今後の広告承認権限、顧客への継続的な説明の一貫性を確認する必要がある。

デジタルマーケティングの統制の成否は、広告制作会社への注意喚起の数では測れない。法務部門は、競争上の優位性を訴求する際に必要な根拠水準を説明し、マーケティング部門は、どのような表現が広告成果を左右するかを共有し、情報システム・経理部門は、実際の価格、売上、申込条件が広告と一致していることを証明できるようにする。この関係が成り立てば、外部への業務委託は統制の弱体化ではなく、透明な責任分担による販路拡大の手段となる。

第6章 措置命令、課徴金、直罰及び確約手続――法執行の相違を前提とする危機対応

景品表示法違反に関する行政対応は、すべてが同一の処分に収れんするわけではない。同法第7条第1項の措置命令は、違反する表示の差止め、再発防止及び必要な公示等を命じ得る行政処分であり、問題となる表示が既に取りやめられている場合にも一定の対象者に対して命ずることができる。表示の誤認を排除するための周知や社内管理体制の整備が求められる場合には、広告費の喪失だけでなく、ブランドの信用や販売チャネルの運営にも影響が及ぶ。単に問題広告を削除すれば調査と対応が終わると理解してはならない。

課徴金納付命令は、これと法的性質が異なる。同法第8条の規律は、所定の優良誤認表示又は有利誤認表示について、その対象となる商品・役務に係る所定の売上額を基礎として原則3%の課徴金を算定する。基礎となるのは会社の総売上高を無条件に用いた金額ではなく、法定の対象行為、期間、商品・役務及び算定方法に即した売上額である。課徴金額が150万円未満である場合等の法定の取扱い、表示が不当であることを知らず、かつ知らないことについて相当の注意を怠った者でないと認められる場合の取扱いも確認する必要がある。当局から表示の不当性を指摘されて初めて根拠資料を探すのでは、平時から表示の適法性を検証していたことを説明するのは難しい。

2024年10月に施行された改正は、制裁制度の実効性も強めた。課徴金の計算に必要な事実を把握できない一定の場合の売上額の推計に関する規定が整えられ、所定の期間内に過去の課徴金納付命令を受けた事業者について課徴金額を加算する仕組みが導入された。加算は法の要件に従うものであり、過去のどのような行政対応でも一律に発動するものではない。また、優良誤認表示及び有利誤認表示について、措置命令違反を待たずに問題となり得る直罰規定が設けられた。消費者庁の改正概要は100万円以下の罰金を掲げている。ステルスマーケティング告示違反と優良・有利誤認の違い、行政上の課徴金と刑事罰の違い、各行為の時期と適用される規定を区別する必要がある。

これに対し、2024年10月施行の確約手続は、一定の違反被疑行為について、迅速かつ実効的な是正を促すための別の制度である。消費者庁が確約手続に付すことが適当と判断して通知を行い、事業者が申請した是正措置等の計画について十分性と実施の確実性が認められた場合、確約計画の認定を行う。認定を受けた対象行為については、法定の一定の措置命令・課徴金納付命令の規定が適用されない。他方、認定は違反行為があったという認定ではなく、事業者が一方的に希望すれば必ず利用できる一般的な和解制度でもない。運用基準は、一定の過去の法的措置歴や悪質かつ重大な行為等について、確約手続の対象としない考え方を示している。

確約計画の内容には、表示の取下げだけでなく、影響の是正、消費者への周知、社内決議、再発防止、監督・報告等が関わり得る。計画の認定により形式的に手続が終了したように見えても、計画の実行とその証拠の保存が必要となる。消費者庁は認定した計画の概要や違反被疑行為の概要等を公表する運用を採るため、違反認定がないことと社会的な説明責任がなくなることは同じではない。取締役会としては、確約認定の効果を過大に宣伝するのではなく、何を変更し、顧客への説明をどう行い、改善が継続するかを客観的に示すことが重要である。

消費者庁が2026年5月28日に公表した2025年度の運用状況は、制度の複線性を具体的に示している。2025年度中、13件の措置命令、8件の確約計画認定、10件の課徴金納付命令が行われ、課徴金の合計は3億3,940万円、指導は388件と報告された。これらはそれぞれの法的類型に応じた件数であり、単純に足し合わせて「違反企業数」とすることは適切ではない。また、2026年6月及び8月の措置命令は2025年度の件数とは異なる時期の事例である。調査の件数や金額だけで企業が次に処分される確率を推測するのではなく、当局が表示の実態と事業者の是正能力を具体的に検討していることを認識すべきである。

違反の疑義が発覚したとき、最初に必要となるのは、法律上の該当性の評価と同時に、広告履歴と販売実態の保全を行うことである。配信中の広告を漫然と継続することは危険であるが、事実確認に必要なログや制作資料まで一括削除しては、後の行政対応、顧客への訂正、委託先との求償及び内部調査が困難になる。営業部門が単独で説明文を対外公表するのではなく、法務、情報システム、経理、経営陣が対応手順を共有し、どの表示を停止するか、どの資料を保全するか、誰が当局と連絡するかを判断するべきである。自主的な是正、返金の検討、確約手続への対応、弁明書・証拠資料の提出及び報道対応は、それぞれの法的要件と時期を踏まえて設計する必要がある。

第7章 取締役会と法務責任者の役割――広告の適法性を持続する企業価値へ結び付ける

広告法務の責任を、法務担当者が制作物を逐一確認するという作業に還元してはならない。景品表示法第22条第1項は事業者に対し、景品類の提供及び表示を適正に管理するために必要な措置を講ずる義務を定め、これに関する消費者庁の指針は、責任者の明確化、情報の確認・共有、表示等を管理する担当者の指定、研修、根拠資料の保管、適正な表示に向けた対応等を具体化している。指針の例示をすべての会社に機械的に同一の形で義務付けるのではなく、商品・サービスの性質、広告媒体、事業規模及び外部委託の実態に応じ、実効性を備えた体制として構築することが求められる。

実務上の第一歩は、広告に記載される主要な事実を、会社の中で誰が保証できるかを特定することである。品質・性能なら研究開発又は品質保証部門、販売価格・キャンペーンなら営業企画と販売システム担当、調査結果なら調査実施部署、インフルエンサー投稿ならマーケティング責任者というように、根拠を持つ担当部署と広告承認権者を結び付ける。検証できない訴求を予定している場合、営業上の必要性だけで例外承認するのではなく、追加の実証、表現の限定、キャンペーン設計の変更又は実施見送りという選択肢を、取引開始前に比較する。法務部門にとって重要なのは、曖昧な免責文を増やすことではなく、会社が広告によって約束しようとしている事実を可視化することである。

第二に、広告の内容と根拠を版管理の対象とする必要がある。デジタル広告は日々変更され、A/Bテスト、広告配信の最適化、ECプラットフォームの価格変更、第三者による口コミの引用によって、公開時点の表示が簡単に失われる。掲載した広告、閲覧環境、実際の価格・特典、適用期間、審査時の資料、承認者、修正履歴及び停止指示の記録を、個別キャンペーンと紐付けて保存することが望ましい。その保存方法は、個人情報保護法上の管理、営業秘密、業務委託契約の守秘義務及び保存期間との整合性を確保したものである必要がある。資料を無制限に集積することが統制ではなく、必要な証拠を適切に再現できることが統制なのである。

第三に、問題発覚時の報告経路を、売上目標から独立して機能させるべきである。広告の違法性が疑われたとき、売上を左右する大規模キャンペーンを止められない組織では、承認規程が存在しても実効的な統制とはいえない。法務・コンプライアンス部門への緊急エスカレーション、適切な範囲での外部専門家の関与、証拠保全、当局対応、取締役会への報告基準、消費者への説明をあらかじめ決めておく。取締役会へは広告素材を無差別に添付するのではなく、影響を受ける商品・顧客の範囲、売上への影響、根拠資料の有無、処分類型、再発防止の実施状況を整理して報告することが、監督機能の充実につながる。

広告法務は、M&A及び事業譲渡においても独立したデューデリジェンス項目となる。買収対象会社が高い顧客獲得効率を示していても、その基礎となる広告が根拠不十分なNo.1表示や実態を欠く期間限定価格に依存していれば、買収後に売上を維持できない可能性がある。買主は、主要商品の表示根拠、調査会社との契約、広告履歴、アフィリエイト契約、消費者からの苦情、行政照会、返金・自主訂正の履歴、広告代理店に対する監査権限を確認すべきである。株式譲渡契約では、既知の行政調査、表示の適法性に関する表明保証、重大な広告変更に関する誓約、情報開示、補償及びクロージング後の是正費用を具体的なリスクに応じて検討する。ただし、契約上の補償が存在することだけで、行政当局の判断や法定の措置命令の対象が変更されるわけではない。

さらに、会社の組織再編に伴う表示上の責任と業務継続の関係も無視できない。景品表示法第7条は、一定の場合に、違反行為を行った法人の合併後の承継会社、分割による事業承継会社、事業の譲受人等に対する措置命令を認める規定を含む。これは、会社の組織再編によって違反状態の是正を容易に免れさせないという制度趣旨と結び付く。他方、買収主体があらゆる歴史的な行政上の義務や課徴金を無条件に承継するという意味に拡張してはならず、行為の時期、承継の方法、命令の性質及び適用条文を区別する。買収価格の交渉においては、過去の表示の違法性そのものだけでなく、表示を是正した後に事業価値がどのように変化するかが重要となる。

2026年の行政執行の動向が示すのは、広告審査が一部の業種に特有の形式的な手続ではないということである。健康関連商品、サービス料金、EC、アプリ、SNSの口コミ等について、表示の根拠と事業者の関与が具体的に検討される。広告が一度公開された後も、その根拠の有効性、キャンペーンの継続条件、レビューの利用方法、外部委託先の運用は変化する。取締役会が求めるべきなのは、年間の法務研修回数の報告だけではなく、主要な広告上の主張に誰が責任を持ち、変化をどのように検知し、問題のある表示を誰が止められるかという統制の実証である。

企業広告は、消費者の期待を形成する取引の入口であり、そこでの説明が実態に裏付けられていなければ、販売実績が上がるほど規制上・財務上の影響も大きくなり得る。適切な統制は過度な萎縮を目的とするものではない。商品の真の価値を、確認可能な資料と明確な取引条件に基づき説明し、第三者の声を利用する際にも広告主としての関与を透明にし、疑義が生じれば早期に是正できることが、継続的な顧客信頼と企業価値を支える。SAKURA法律事務所が本稿で重視するのも、法令の文言を広告末尾に追記する形式的な対応ではなく、広告・販売・契約・経営監督を一体として設計する企業法務の視点である。

FAQ(よくある質問)

Q1 景品表示法はBtoBの営業資料や海外向け広告にも必ず適用されるのか。

同法は主として一般消費者の自主的かつ合理的な選択を保護する制度であり、純粋な事業者間取引資料に当然に一律適用されるものではない。表示を誰が見て、何を選択するために使うのかを確認する必要がある。海外向け表示には現地の消費者保護法等も別途検討する。

Q2 No.1表示は第三者調査会社の証明書があれば掲載してよいか。

証明書の存在だけでは足りない。比較した商品・サービスの範囲、回答者の属性と利用経験、質問方法、調査の時期、集計方法及び広告表現との対応を確認する。表示する範囲が調査結果の射程を超えないことが重要である。

Q3 効果や性能の根拠資料は行政調査が始まってから作成すればよいか。

その運用は危険である。景品表示法第7条第2項及び第8条第3項に基づく合理的根拠資料の提出期限は通常短く、消費者庁の公式Q&Aは原則15日以内と説明している。広告前に客観的資料を確保し、広告の主張との対応を管理すべきである。

Q4 売上第1位、利用者満足度第1位、医師推奨の表示は同じ基準で判断されるか。

いずれも根拠と表示の対応が必要だが、客観的な売上数値と第三者の主観的評価では調査上の注意点が異なる。顧客満足度を訴求する場合に、利用経験のない者のイメージ調査を使うことは問題となり得る。専門家推奨についても、評価対象と根拠を確認する。

Q5 「通常価格から50%OFF」と書くためには何を保存するべきか。

比較対照価格の性質、同一商品について実際に販売した期間と価格、適用条件、セールの開始・終了時期及び広告内容を保存する。比較価格が単なる社内登録価格であったり、過去の販売実績を欠いたりする場合は慎重な検討が必要となる。

Q6 インフルエンサーへの商品提供は必ずステルスマーケティング告示違反となるか。

必ずしもならない。事業者が投稿内容の決定にどう関与したか、その投稿を消費者が事業者の表示と認識できるかを、具体的事情から判断する。金銭報酬の有無だけで決めず、依頼内容、編集・承認、投稿表示の方法を確認する。

Q7 投稿に「PR」と表示すれば、商品の効果を誇張しても適法になるか。

ならない。「PR」等の表示は広告主の表示であることの識別に関わる一方、効果、品質、価格に関する説明の真実性は別個に求められる。ステルスマーケティング告示への対応と、優良誤認・有利誤認の審査を分けて行う必要がある。

Q8 ステルスマーケティング告示違反だけでも課徴金が課されるか。

同告示違反のみでは景品表示法上の課徴金納付命令の対象とならない。ただし、同一の広告が優良誤認表示又は有利誤認表示にも該当する場合、その部分について別途課徴金の要件を検討する。措置命令の対象となり得る点も区別が必要である。

Q9 2024年10月施行の景品表示法改正で企業の負担はどう変わったか。

確約手続が導入され、課徴金計算上の推計・一定の再違反時の加算が整備され、優良誤認・有利誤認について直罰規定が設けられた。全ての不当表示が同一の刑事罰や課徴金の対象になるわけではなく、行為類型と法定要件を区別すべきである。

Q10 確約計画の認定を受けた企業は法違反を認めたことになるか。

ならない。確約認定は、消費者庁が所定の是正措置等の十分性と実施の確実性を認める行政上の制度であり、認定自体が違反行為の認定ではない。ただし、計画に定めた措置を実行し、その履行状況を管理する必要がある。

Q11 広告代理店に全責任を負わせる契約があれば広告主は安全か。

そうとは限らない。契約による当事者間の負担分配と、商品・サービスを供給する事業者に適用される景品表示法上の規律は異なる。広告主として、制作・配信・修正・停止・証拠保存の権限と運用体制を確保する必要がある。

Q12 買収対象会社の広告に問題がある場合、M&Aで何を確認するべきか。

主要商品・サービスの広告履歴、効果やNo.1表示の根拠資料、価格・キャンペーンの実績、広告委託契約、苦情・行政照会の履歴、返金や自主訂正の状況を確認する。買収後に広告を是正した場合の売上への影響を評価し、表明保証、補償及び統合後の管理計画に反映する。

代表弁護士 道下剣志郎「Legal Update」について

SAKURA法律事務所及び代表弁護士 道下剣志郎は、企業法務、M&A、プライベート・エクイティ、国際取引・紛争、金融規制、企業統治、危機管理、IT・AI・データ、知的財産、広告・消費者保護その他企業の重要な経営判断に関わる法的課題について、一次資料に基づく実務的なLegal Updateを継続的に公表している。本シリーズでは、現行法、政省令、行政告示・運用基準、裁判例及び行政上の執行事例を区別し、制度の趣旨と契約・企業統治・取引実務との関係を論じることを目的とする。公式サイト及び代表弁護士プロフィールページに、事務所と執筆者に関する情報を掲載している。

関連情報:SAKURA法律事務所 公式サイト / 代表弁護士 道下剣志郎 プロフィール

SAKURA法律事務所に相談できる事項

SAKURA法律事務所では、景品表示法に基づく広告のリーガルチェック、優良誤認・有利誤認表示及びNo.1表示の根拠審査、SNS・インフルエンサー・アフィリエイト広告の統制、二重価格表示・継続課金・キャンペーン表示、広告代理店や販売パートナーとの契約及び内部規程の整備、行政調査への対応、確約計画、措置命令・課徴金に関する検討、企業不祥事対応、広告規制リスクを含むM&Aデューデリジェンス等について、関連法令と事業実態を踏まえた助言を行うことができる。具体的な表示の適法性や当局の判断は個別事情に依存し、法律事務所が行政処分の有無又は確約認定の取得を保証するものではない。

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主な参考資料

1. e-Gov法令検索|不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号・現行法)

2. 消費者庁|令和5年改正景品表示法の概要(令和6年10月1日施行)

3. 消費者庁|景品表示法関係法令・告示・行政資料総覧

4. 消費者庁|不実証広告規制に関する運用指針(景品表示法第7条第2項)

5. 消費者庁|表示に関するQ&A(合理的根拠資料、15日等)

6. 消費者庁|No.1表示に関する実態調査報告書(令和6年9月26日)

7. 消費者庁|不当な価格表示についての景品表示法上の考え方

8. 消費者庁|将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針

9. 消費者庁|インターネット消費者取引に係る広告表示に関する問題点及び留意事項

10. 消費者庁|ステルスマーケティング告示(令和5年内閣府告示第19号)

11. 消費者庁|ステルスマーケティング告示の運用基準(令和5年3月28日)

12. 消費者庁|ステルスマーケティングに関するQ&A

13. 消費者庁|事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針

14. 消費者庁|事業者の表示等の管理措置に関するQ&A

15. 消費者庁|一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(告示)

16. 消費者庁|懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(告示)

17. 消費者庁|インターネット上で行われる懸賞企画の取扱い

18. 消費者庁|景品表示法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方

19. 消費者庁|確約手続に関する運用基準(令和6年4月18日)

20. 消費者庁|令和7年度における景品表示法等の運用状況(令和8年5月28日公表)

21. 消費者庁|冷凍宅配食の販売事業者2社の確約計画認定(令和7年9月19日)

22. 消費者庁|ソシエ・ワールドの確約計画認定(令和8年3月3日)

23. 消費者庁|株式会社ゲオストアに対する措置命令(令和8年6月11日)

24. 消費者庁|高光製薬株式会社に対する措置命令(令和8年6月29日)

25. 消費者庁|アプリ「SNOW」に係る2社への措置命令(令和8年8月6日)

26. 消費者庁|株式会社giobaiに対する景品表示法に基づく措置命令(2026年10月20日) — 公式公表資料

免責事項

本稿は2026年10月22日までに公開されている景品表示法、関係政省令、指定告示、消費者庁の運用指針・Q&A、No.1表示に関する実態調査報告書、2025年度の運用状況報告及び2026年の公表事例等を参照した一般的な法律情報であり、個別の広告、契約、行政調査、企業買収等に関する法律意見を構成するものではない。法令の規定、行政告示、行政指針、確約認定、措置命令及び実務上の提言は、それぞれ法的位置付けが異なる。とりわけ確約計画の認定は当該行為についての違反認定を意味せず、2025年度の件数は当該年度の実績であって、その後の公表事例まで含むものではない。広告・販売スキームの検討や行政対応に際しては、施行状況を含め最新の公式資料を確認し、個別事実に即して判断する必要がある。

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